演劇集団キャラメルボックス「少年ラヂオ」@サンシャイン劇場

(あらすじ)
大正時代の末期の東京に暮らす、幼いころに両親を亡くしてしまった少年・ラヂオ。彼には一人きりの弟がおり、親戚に牛馬のような扱いを受ける弟を取り戻すために、彼はスリをして生計を建てていた。
そんな彼が一人の少女と出合ったことから、物語は動き出す。両親を亡くした彼女は財閥の当主の叔父の家に住んでおり、病弱な彼女が久々に外出した時にスリに出会ってしまう。その場に居合わせたラヂオは、スリから彼女を助けた謎の男・明智に引きずられるかのように、財閥の大きな陰謀の渦中に巻き込まれていくのだった。
(感想)
大正時代という舞台設定のなか少年少女たちの活躍や成長を描いたジュブナイル風の冒険活劇です。最初のほうはキャラメルボックスの作品にしてはテンポの良さが今一つ感じられずにややもどかしを感じたのですけど、それを取り戻すかのような中盤以
降の畳み掛けるような小気味の良さや、笑いあり涙ありでいろいろな楽しめる要素を詰め込んだ作品でした。この辺の楽しませるという事に関しては相変わらずの素晴らしさだなと思います。今回は主人公のラヂオ役の畑中智行さんやヒロイン役の岡内美喜子さんなど劇団のなかでも比較的若手の役者さんを中心に据えて、岡田達也さんや菅野良一さん、坂口理恵さんなど主役クラスの役者さんが脇を固めているあたりが、何とも贅沢だなと思いつつ、主役クラスの役者さん達には結構なプレッシャーだっただろうと思います。がんばっていたとは思いますけど、やっぱり所々は持っていかれたように感じました。特に脚本の関係もあったとは感じますけど、ヒロイン役の岡内さんの存在感がちょっと薄かったのが残念でした。そのせいか、少年が少女と出会って成長するというこの物語の要の部分の軸がぶれてしまったように感じます。それとジェットエンジンの図面を盗むくだりそのものは面白かったのですけど、彼が図面を盗む理由付けの部分もちょっと中途半端だったように感じました。
成井さんの久々のオリジナル作品ということで、かなり楽しみで行ったのですけど、個人的には、今年行った「雨と夢のあとに」や「俺達は志士じゃない」の方が良かったように感じます。ただそれでも充分に面白い作品だと思いますし、今回の作品で原作があってもなくても、初演でも再演でも変わらないレベルの作品作りができるということが、いい意味でも悪い意味でも分かったような気がした公演でした。
ところで私の行った日はダブルキャストの片方のキャストの千秋楽だったのですけど、舞台挨拶があったり、役者さんたちが舞台に下りてキャラメルを配ってくれたりと終演後も何とも楽しいひと時でした。厳密にいうと千秋楽ではないのですけど、いつも最終日のチケットが結構取りにくい理由が分かりましたし、本当にファンサービスが行き届いた劇団だなと改めて関心しました。