PARCO presents「サムシング・スイート」@PARCO劇場

（あらすじ)
ケーキ店「サムシング・スイート」のオーナー、明美（辺見えみり)とそこに同居する作家、香織(星野真里）。ふたりは古くからの友人なのだが、5年前の雨の日に香織が交通事故に会い下半身不随になり、更には婚約者との子供が流産になった挙句、彼と捨てられるように別れてしまった過去を持つ。自分が買い物を頼んだせいで事故に会ったと言う後ろめたさを感じながら、彼（山崎樹範）と付き合いながら香織と同居を続ける明美。事故に会って以来、車椅子の生活を余儀なくさせられ人間不信になり、明美につらく当たる香織。
そんないびつな関係で同居を続ける二人のもとに香織の小説を読んで、ファンレターを送り続けた男、道彦（金子昇）がやってくるのだった。
（感想)
当初はタイトル通り、ベタ甘なラブストーリーなのかなとも思ったのですが、女性の嫉妬や憎しみを抱えながらも分かちがたい友情を描いたビターな作品になっていきます。脚本家が中谷まゆみさんということもあり、完全に女性の観点から書かれた作品で、そのため男性の私には、正直共感できるという部分はさほど多くなかったのですが、その替わり女心の複雑なヒダというのが良く描かれていて、いい勉強にはなりました。
題材は最初ベタ甘なラブストーリーかと見まがってしまったほど、どこか現実離れしたもので、特に金子昇さん演じる道彦なんでまさに少女マンガに出てくる白馬の王子様状態。男性の私から見たら「こんなやつ現実にはぜったいにいないよ」って思いながら観ていました。ただ、題材は現実離れしていても、そこに登場する登場人物達の心の動きは結構リアル。ただ、ビター一辺倒でなく観終わった後の後味は決して悪くないです。そんな、何層にも組み立てられた作品は作りはとても巧みで、ベタなたとえなのですが、ただ甘いだけでなく、層によってさまざまな味のするチョコレートケーキのような作品です。
ただ、作品の作りは巧みですし、星野真里さんや辺見えみりさんを始めとして役者さん達の演技も決して悪いものではないと思うのですが、それでも単純な好みの部分の問題とは別の部分でどこかしっくりこないな、という気がしました。それは、一つには女性の描き方に比べて、男性の描き方がやや薄っぺらく感じてしまったこと。そしてもう一つは、最初の2幕位、星野さんと辺見さんの2人の演技と配役との間に溝を感じてしまったせいだろうと思います。この辺は、脚本にも若干の問題があるのかと思いますが、それでも描き足りていない部分を男性の演出家の板垣恭一さんに上手く補完して欲しいなとは思うのですが、補強しきれないだけでなく、中谷さんの脚本を消化しきれてない部分があったように見受けられました。
全体的に上手く作られているとは思うのですが、残念ながらそれがすごい、というところまではいっていない、そんな印象を受けました。土台は悪くないと思うので、もし、この作品の脚本、演出、演技、全てにおいて充分に練りこまれていたとしたら、そんなことを考えると、とても惜しい作品です。