経済とH「なまけもの百科事典」@王子小劇場

小林顕作さん作・演出の作品。タイトルは「なまけもの百科事典」になっていますが「なまけもの」とも「百科事典」ともほとんど全く関係ありません。ダンスあり、ショートコントあり、コメディあり、ゲストコーナーありの90分弱。ナンセンスな笑いが多くそれなりには面白かったです。ただ、脚本の出来や、役者さんの力量を考えるともっとドカンと来てもいいはずなのに、そこまでの面白さは感じることは出来ませんでした。
この日のゲストコーナーはTEAM・発砲・B・ZINの平野勲人さんで、全くつながりのない4コマの絵から即興の作品を作っていったり、いきなり訳の分からないシチュエーションに放り込まれてアドリブで演じていったりと形で、いきなり作品の中に放り込まれながらの平野さんのとまどいながらも切り抜けていく姿が、掛け値なしに面白かったです。平野さんのファンが多かったとはいえ、もの凄く盛り上がっていました。
ただ、裏を返せば一番面白かったのがゲストのアドリブというのは、劇団として大きな問題だと思います。基本的にナンセンスな笑いや、ベタなネタをかぶせたり、寒さでウケを取るシーンなど、役者さんの小手先の技量よりも、力づくでねじ伏せていくような部分が必要だったように感じます。役者さん一人一人は上手いなと思うのですけど、作品をねじ伏せていき、舞台に引きずり込む強烈な個性というものを感じることはできませんでした。ですから、たくさんの役者さんが出ているのも関わらず、平野さん一人の存在感に負けてしまったような作品になったのかなと思います。
それともう1つ気になったのが、旗揚げ公演の時に感じた劇団としてのまとまりのなさがあまり解消されているとは思われなかった点です。それが、会話の間の悪さを生んでしまい、本当は面白いはずの所で笑えなかったり、多人数で出てくる時の雑然さにつながってしまっているのが残念でした。
ただ、今回の作品についてだけいうと、役者さんだけの責任ともいえず、脚本・演出家と劇団とのカラーとが合っていなかった部分があるように感じました。少なくても、この作品でしたら、役者さんの人数を絞って、ひとりひとりの個性を前面に押し出さないことには、面白くならないです。
全体的に厳しい事を書いてしまいましたけど、役者さんや劇団のポテンシャルはかなり高いものを感じます。いつ、ものすごい作品を作ってもおかしくない力量はあるとは思うのですけど、少なくても旗揚げから今回の2回の公演までについては、潜在能力が充分に発揮されてるとは言いがたい状況でした。それが、観ている側としてはなんとも歯がゆい気分になりました。

(付記)
私の行った回は、客入れ、客出しを佐藤治彦さん自らが先頭になってやってしました。開場の時にちょっとびっくりしましたし、私の中では結構嬉しかったです。そのかわり役者としての佐藤さんが観れなかったのがちょっと残念でした。