シベリア少女鉄道「俺達に他意はない」@赤坂RED THEATER

(あらすじ−この劇団の場合、全く意味がないと思いますが)
ビルの中にある喫茶店で待ち合わせをする人達。あいにく外はすごい暴風雨で、電車も停まっていたり大幅に遅れていたりしていて、待ち合わせの人間はその場にやってくる気配がない。そんな時に、喫茶店に浮浪者風の男がやって来たと思ったら、突然倒れてそれっきり息を引き取ってしまう。彼の手には身代金を要求するメモが。ただ、そこには名前が書かれていない。果たして喫茶店にいる一体誰に当てたメモなのか?男が倒れた直後、暴風雨の影響でエレベーターが停まってしまい、喫茶店の中に閉じ込められてしまう。人々は、誰に当てられたのか分からないメモの謎を解決しようと気が付いたら協力しあうことになったが…。
(感想)
シベリア少女鉄道を見ていると、ミステリーやマジックの本編やネタと、解決偏と種明かしという図式を連想させる時があります。今回の作品も前半と後半が各パートに奇麗に分かれているような感じ。その中でも後半の種明かしに当たるパートは相変わらず意表を突いてくれているし面白かったです。あまり多く触れるとネタバレになりますし、言葉で言っても伝わりにくいとは思いますが、ひとことで言うと設置されたモニターに書かれたテロップと実際に演じている役者さんの演技とのズレを巧みに利用したもの。どうしようもなく馬鹿馬鹿しいのですが、小さなネタをひたすら積み重ねながら畳み掛けていく展開も、そのネタがつながって何となく一つの流れになっていくのも理屈抜きで楽しめました。贅沢をいうと、種明かしに当たる部分がちょっと長くなってしまい、ややもすると冗長な感があったこと。二段オチのように、最後にもう一つ話をひっくり返す仕掛けがあったら言う事がなかったのになと思います。
それよりも問題があったのが、前半の本編に当たる部分の芝居と脚本がかなりお粗末だった点。例えば、舞台を密室状態にすること、店員も含めてその場に居合わせている人全てが誰かを待っていること、その中で事件が発生する事、それを解決するために協力せざるを得ない状況にすること…Etc。この作品で、後半の仕掛けを発動させるためには舞台上でいろいろな条件が揃わないといけないことは理解できます。ただ、その条件を成立させると作品につじつまが合わなくなってしまう場面が次々と発生してしまって、その穴埋めをするためだけに、前半部が存在しているようで、そのため前半部の作品の質や面白さがどこかに置き去りになったりおざなりになったという感も。正直、彼らの演技そのものにさほど大きな期待を抱いてはいなかったのですが、役者さんのメンバーを考えると、脚本や演出できちんと動かせばもうちょっときちんとした話はできるはずなのにと思います。個人的には「あまり高くないハードル」なのだからこの程度はクリアして欲しいというレベルさえもいっていないという印象。観客の意表をつくことも大切ですが、そこで楽しめるのは、それ以外の場面をしっかり演じきっているので、通常の場面との落差がより大きくなって楽しめるというもの。前回公演の「永遠かもしれない」の時には、普通にウェルメイドな作品をやっても結構いけるのでは?と思わせる部分があっただけに余計に残念です。
最後の30分は馬鹿馬鹿しいと思いながらも不覚にも笑ってしまいましたが、その前の部分の印象の悪さと、もうひとつ仕掛けが欲しかったという部分で、プラスな部分とマイナスな部分がトントンといったところでしょうか。「面白い」とは思いましたが、「びっくりした」というところまではいかなかったのが残念です。