ヨーロッパ企画「火星の倉庫」@サンモールスタジオ

(あらすじ)
世界各国からさまざまなものが集る港の倉庫。そこで働く男が一人の女性に恋をする。その女性は彼と同僚の行きつけの飲み屋の女の妹。
同僚達は、たまたまそこの居合わせた姉と一緒に彼の恋の成就を手助けするために、同僚が妹を襲ってそれを男が助けるという、ベタな一計を立てる。
しかし、その場所がマフィアの麻薬の取引場所に使われていたことから・・・。
(感想)
大小のコンテナがそこら中に並んだセットで、正直、開演前にセットを見た瞬間に「このコンテナの中に色々なものが入っていたり、動かしたりするんだろうな」という見当は付きました。ただ、大技小技を交えて、これでもかというその仕掛けの数とバリエーションの多さには驚きの一言。普通でしたらどう考えても2時間持たすには厳しいだろうと思われるネタだと思うのですが、最初から最後まで飽きる事なく大笑いさせてもらいました。特に面白かったのがコンテナを移動させた後に、時間差でストーリーが追いかけていく展開。「こう来るな」というのを待ち構える笑いの場面があったかと思うと、時たま、予想外の角度から「こう来るのか」という意外性のある笑いがくるので、これがいい不意打ちになってくれて、さらにおかしかったです。サンモールスタジオという、彼等にとっては大きな劇場のメリットをフルに活用した緻密で壮大な「お遊び」といった感じ。ストーリーもそうなのですが、コンテナの使い方を見ていると、これがホントのパズル芝居かというベタなツッコミも。コンテナの荷物を使った小ネタも随分と多かった印象を受けますが、役者さん一人一人個々のキャラクターを上手く生かすネタがあり、ぞれぞれの役者さんの持ち味が生きています。
面白いけど、細かいネタばかりだなとか、この話のどこに「火星」があるのだろうかと思っていたら、最後に大仕掛けにはびっくり。巨大宇宙人がでてくるなんていう話、普通に唐突に出されたらどうしようもなくベタでくだらないのですが、出すタイミングと伏線の張り方、そして宇宙人の姿が全て絶妙なので、出てきた瞬間には完全に「やられた」という気分に。笑わせるだけでなく、地球環境の問題を扱う予想外(?)の社会派作品だったり、最後の最後でちょっとしんみりさせてくれたり。笑い一辺倒でなくいろいろな顔をチラッとだけ見せてくれたおかげで、個人的には作品が締まった印象を受けて好感が持てました。
今年上演した「バック・トゥ・2000シリーズ」の再演3本がなかなか面白かった反面、去年の「ブルーバーズ・ブリーダーズ」は今一つだっただけにちょっと心配な部分もあったのですが、期待以上の出来で満足できました。純粋に面白くて笑えたという点だけで見れば、今年私が観た舞台の中でも屈指だったのではないでしょうか。