team申「抜け穴の会議室」@赤坂RED THEATER

(あらすじ)
ベッドの上で寝ている一人の男。男が目を覚ますとそこは今まで見た事もない光景が。そればかりかさっきまで寝たきりで動く事さえ出来なかったのに、立ち上がって普通に動く事さえできる。自分の何故こんなとこに居るのか、そもそも何者かも全く思い出すことができない。
そんな男の目の前に始めて見る一人の男が。男との会話で彼は、自分が死んでしまった事、この場所が前世と来世の狭間の世界の事、来世には過去の自分の事を学習しないと行けない事、彼と男が生前やその前の世界で並々ならない因縁がある事、などを知る。そこで男は自分の過去を知るために、彼と一緒に2人の過去の事実が書かれている本を読み進めてゆくのだが・・・。
(感想)
佐々木蔵之介さんの演劇ユニットteam申の第二回公演。一回目は拝見していないのですが作・演にモダンスイマーズの蓬莱竜太さん、佐藤隆太さんを起用したそうで、若手の劇作家と旬の役者さんと組んでの2人芝居というのが基本のようです。今回は、作・演にイキウメの前川知大さん、相方には仲村トオルさんを起用と、私にとってはこれ以上ない位の贅沢な布陣。ただ、客席は9割以上女性で、数少ない男性も女性ファンに連れられてきたお客さんがほとんど。気持ち居心地の悪さも。ただ、200席程度の小さい劇場でお二人を見れるという機会もほとんどないので、ファンだったら確かに見逃せない作品だったのだろうということも納得です。
作品の方もそんな二人の様々な表情や演技が観れた作品。お二人のファンでもそうでなくても(ただしそうでない人は、男性も含めて会場に来ないと思いますが)、満足できる作品に仕上がっていたと思います。
彼らの演技が色々観れて面白くしたのは、作・演の前川さんの力も大きく貢献しています。特に今回は「輪廻」という設定が妙。前世では親友だったのがのが明らかになってくるシーンはコミカルさを前面に。特にビデオを借りに来た客の佐々木さんと店員の仲村さんとのやり取りは絶妙。役者としてのイメージがしっかり固まっている感のあるのある仲村さんが脱線するさまは意外性もあってホントに面白かったですし、それを佐々木さんが器用に立ち回って拾っているあたりは上手さを感じます。
それが段々と雲行きが怪しくなってくるのが、前々世の2人が兄弟だったシーン。仲村さん演じる兄の死、その原因を作ったのが佐々木さん演じる弟。前々世と前世が混線してしまったり、お互い死んでしまい今は終ってしまったことなのに割り切れない部分があったり、その後その因縁が上手くつながり奇麗に終っていくシーンなんかも、派手さこそありませんが作品の組立てとしてはとても上手さを感じます。
ただ、脚本の部分でちょっと気になったのが、2人が過去を学ぶ手段が事実の書かれた「本」を読むという設定。自分でもちょっと細かいかなと思いますが、過去が「本」に書かれた時点で客観的な事実ではなくなってしまうということに対して、きちんとした回答が用意されていなかったという点。そのせいか、自分自身は「事実を学習する」という作品の根幹の世界に上手く入り込めなかった印象があります。例えば、2人が同じ本を読んでいるけど、書いてあることが微妙に違ってして、2人分カバーして始めてことの真相が分かる、そんな設定にした方が不自然ではないですし、話が広がっていったのではないでしょうか。
役者さんの演技を見せるという部分では良くできていましたし、脚本や演出に上手さを感じる作品だったとは思います。ただ贅沢をいうと、手堅くまとめるだけでなく、もっと設定を生かした荒唐無稽さや話の広がりが欲しかったように感じます。