自転車キンクリートSTORE「ツーアウト」@THEATER/TOPS

(あらすじ)
連敗街道まっしぐらの草野球チーム・ホケッツ。今日の対戦相手との試合も、立ち上がりからピッチャーはストライクが入らず、野手はエラー連発で、2回にして早くもいつもの展開。
そんな展開にホケッツの監督・秀吉はいつも以上にやる気が感じられない。そんな彼のことを見かねたスコアラー兼マネージャーの草野がそのことを問いただすと、実は試合の日の朝妻が家を出て行方不明になってしまっていて、本当は試合なんかやっている場合ではい。
その上、試合中に秀吉の会社の後輩の女性や、息子がベンチにやって来て・・・。
(感想)
私が行ったのは千秋楽なのですが、舞台挨拶を見る限りでは本当にいい雰囲気やチームワークだなという気が。それを反映したという訳ではないのですが、作品の方もちょっとダメで愛すべき人々が繰り広げるハートウオーミングな話に仕上がっています。笑いながらも、ちょっとホロっときたり、登場人物達を我が身に投影させてみたり、登場人物同様とても親しみやすい作品だったように感じました。
作品は自分達のチームが守備の時のベンチの模様を各イニングごとに1幕で、合計7幕という設定。クドカンさん脚本の某野球ドラマを連想させる部分こそありますが、リラックスしながらも集中力を切らすことなく舞台を観る事が出来るという点では、なかなかいい趣向だったと思います。ただ、この趣向が野球と言う動きのある題材を扱っている割には、動きと変化に乏しい作品になっているのがとても残念。劇中で瀧川英治さん演じる相手チームの助っ人がコーチャーに立ってひとことのシーンが作品のいいアクシデントになって抜群に面白かったのですが、裏を返せばこれ以外に目先や動きに変化を与えられるシーンが少なかったということ。脚本自体は結構上手くできてはいるとは思うのですが、それを演出レベルで見せると所でやや単調になってしまったのが残念でした。
ただ、それ以上に問題だったのが、作品の主人公・秀吉が監督を押し付けられて雑用まがいのことをさせられているにも関わらず、それでも野球が好きで仕方がないという部分が作品の上からあまり感じられなかったこと。ベンチでプロ野球や学生野球のネタが全くなかったり、ホケッツの過去の試合のこともあまり触れられていないのには、草野球の試合の会話としてはちょっと不自然さを感じてしまいました。おそらくこの作品、野球のことが良く分からない人が、草野球という舞台の面白さから野球のことをものすごく勉強されて書かれたのだと思いますが、その結果が、野球のことや野球のルールが分から人だと充分に楽しめないのに、野球ファンだと違和感を感じてしまうという中途半端な結果を生み出してしまったのではないかと思いますし、もうちょっとそのさじ加減に気をつけていればもっといい作品になった可能性が大きかったと思います。
純粋に舞台作品として見た場合、結構面白かったですし役者さんの演技や作品の組み立て方の随所にも上手さを感じました。本当ならこれだけでも充分なのでしょうけど、それでもどこかもっといい作品ができるはずだと感じてしまうのは、一演劇ファンであると同時に一野球ファンでもある私の贅沢なのでしょうか。