天然スパイラル「トワイライト王女〜孤独が中途半端で困る〜」@三鷹市芸術文化センター・星のホール

(あらすじ)
トワイライト王国は代々、成人した王家の長女が王女として国を治める伝統がある。王家の長女マーブルはもうすぐ19歳。来年には女王の地位を引き継ぐ資格を持つが、世間知らずの上に、王位に全く興味がない。
そんな彼女が19歳の誕生日の式典に魔女達がやってきて、姫に呪いをかける。その呪いはため息を吐くとその息が毒になり、それを吸ったものがたちまち死に絶えてしまうというものだった。
姫たちは、呪いを解くために、魔女達の住んでいるという森に向かうのだが・・・。
(感想)
話の基本的な枠組みというのは一言でいってしまうと「世間知らずの王女様が、外の世界を知ることで、自分の運命や義務を受け入れる」という作品で、良くいえば王道の成長物語で、悪く言ってしまうと手垢のついた使い古された設定ともいえる作品だろうと思います。基本的にはそれを直球勝負で演じているのですが、その直球が観客のもとにはただの真っ直ぐではなく、クセ球のようにひとひねり利かせて届けていくあたりがこの劇団、特に脚本・演出を担当している金房実加さんの非凡な部分です。基本的にこの作品、ひとこと多い登場人物達がやたらと多いのですが、その余計な一言がとても効果的。タイミングももちろんなのですが、ユーモアと毒のさじ加減が絶妙で、センスの良さを感じます。
ひねる部分だけでなく、見せてくれる部分もしっかり見せてくれます。役者さんもミュージカル科出身という経歴の割りにはダンスパートは「う〜ん」と首を傾げたくなってしまいましたが、基本的な演技そのものは、客演の男優さんも含めてなかなかしっかりとしていて好印象。このクラスの公演では珍しいともいえる凝った舞台セットを駆使して作られる絵もなかなか見事です。
最初の掴みの部分から、全般的に総じて楽しめましたが、個人的には2時間という時間がちょっと長かったと気がしました。特に序盤のつかみを上手く生かし切れずに、中盤から後半にかけて作品がやや平板になってしまったのが残念でした。時間をもう少し短めにカットして作品をテンポアップするか、中盤に盛り上がる見せ場を作って欲しかったと思います。王女が呪いをかけられたという設定を終盤でひっくり返すのはいいのですが、折角作った設定を上手く使いきれていれば、もう少し中盤の展開が膨らんだという気がします。
けど、今回始めて拝見する劇団なのですが、女優さんは魅力的でしたし、純粋に楽しめる作品ではあったので、観に行って良かったとは思います。ステージがもっと大きくなっても自分達の力量を発揮できるようにも見受けましたので、今後の公演が楽しみな劇団ではあります。