O.N.アベックホームラン「セプテンバーホール〜9月の散らかった穴」@ザ・スズナリ

大堀こういちさんと温水洋一さんという芸達者な2人のゆるい、ゆるい2人芝居です。全体的にシュールで何がなんだか分からないけど、その訳の分からなさが馬鹿馬鹿しい仕上がりになっていました。始めにアイディアありきと言った感じで、それを無理にまとめずに、時にはオチらしいオチもつかずに進んでゆく、オムニバスのようなオムニバスでないような何とも不思議な感触がします。正直、舞台の形としてはどうかなあとか、ネタによってはちょっとアイディア倒れかなと思える部分があったような気がします。ただ、お2人の演技を楽しむという点で見た場合、このやりっ放し感がかえって良くって、演じているほうも楽しそうでしたし、客席の反応もぬるい温かさに包まれていて、観ているこっちも楽しかったです。その辺はお2人の演技の他に、人柄による所も大きいんだろうと思いますけど。
一見何でもありのように見えましたが、そこまで出来たのは夢の中に存在し、人の夢を吸い取ってしまうという「セプテンバーホール」という舞台を一つにまとめるしっかりしたアイディアが土台にあったのが大きかったからだと思います。「夢の中」という設定が今回の何でもありの作風に上手くマッチしていて、その穴のふさぎ方のシュールさが更に笑えるという仕掛けで、本当に上手いアイディアを作ったなと思います。セットをシンプルな必要最低限のものに押さえているにも関わらず目まぐるしく変わる場面や役柄をフットワーク良く難なく演じ分けてしまうあたりは、ナマで観ていると改めて凄いなと思います。
ただ、一つだけ贅沢をいうと、その上手さが邪魔をしてしまったというきらいがあって、馬鹿馬鹿しい作品で面白かった割りに笑えなかったなというのがちょっとだけ残念でした。個人的には、シュールな場面に出くわしても「おかしいだろ!」ってツッコミを入れる前に、「うまい!」って感心してしまう場面が多かったように思います。それでも、シモネタや自虐ネタという小手先で簡単な笑いを極力避けて、あくまでも演技やアイディアで勝負しようという姿勢は、作品のユルさに反したお2人の心意気を強さを感じて、とても好感が持てました。