デス電所「輪廻は斬りつける(再)」@駅前劇場

(あらすじ)
女子高生が行方不明になる事件が起こった。捜査を担当した刑事は、携帯電話の写真から、彼女はある街でいなくなった可能性が高いと推理する。
ちょうどそのころ、その街は新興宗教が流行していたり、ちょっと変わった工場に新しく女性が入ってきたり、ヤクザの抗争があったり、少年演歌歌手がデビューしたのに全く売れなかったりしていた。
そんな街で起こった一見何にも関係ないことが、つながったりつながらなかったりした挙句に、その先に起こった出来事とは・・・。
(感想)
最初は客演の役者さんが舞台を乗っ取ったという設定でのグチと宣伝のようなものから始まり、その後に劇団のテーマが始まってダンス。時計を見るとその間20分。確かに面白かったけど、本筋に入るまでにここまで時間を掛けて作りこんで果たして大丈夫なのか?という不安を駆り立ててくれます。
その後は目まぐるしく場面を変えつついろいろな場面や登場人物が表れ、シモネタ、内輪ネタ、更には客いじりまで駆使して前半は進んでいき、それを後半でバラバラの断片を力ずくでまとめて行きます。客いじりは、他人事として見ている分には面白いですけど、自分がいじられれるのは嫌なので、つかまらなくて本当に良かった。勝手にあだ名をつけられて、それをお客さん全員に呼ばれるなんて、自分だったら恥ずかしくて劇場から逃げたくなります。
全体的な感想としては、最初に感じた不安の半分は外れて、半分は当たってしまったなといった感じでしょうか。外れた部分は、ハイテンションを保ちつつ、最後まで息切れせずに乗り切った点。客演さんも含めて1人1人個性的でエネルギッシュですし、馬鹿馬鹿しさの中にも、演技や音楽や演出などの土台になる部分はしっかりしているな、という印象を受けました。
不安が当たった部分は、前半、本筋と関係ないところを作りこみすぎて、後半本当はもっと作りこんで欲しい所で、駆け足になってしまった印象を受けたことです。そのため、バラバラの断片が唐突にまとめられた印象を受けました。
個人的な意見なのですが、この作品の持つ見た目の馬鹿馬鹿しさの裏側には、人間の愚かさ―特にさまざまな物事に執着する醜さ―がシニカルに描かれていますが、この部分をもっと前面に押し出した方が、面白かったように感じます。最後の「生まれ変わるんだったら人間よりもホウレンソウの方がいい(という感じ)」という歌とダンスが自分の中では結構心に刺さっただけに、そこに行くまでのプロセスがもっときちんと書き込まれていたら、と思うと本当に残念です。純粋に、エンターテイメントしては楽しめましたけど、前回公演が良かっただけに、正直それと比較するとやや物足りない印象を受けました。
ただ、私が公演に行ったその日は35度以上の猛暑。よく言えばエネルギッシュ、しかし身も蓋もない言い方をすると暑苦しい舞台だっただけに、もしかしてもうちょっと過ごしやすい時に観ていたら、作品の印象も随分と違っていたかもしれません。