青年団リンク東京デスロック「unlock#2:ソラリス」@こまばアゴラ劇場

(あらすじ―公演のチラシより)
ケルビンは研究のため惑星ソラリスにやって来ました。
すると死んだはずの妻ハリーが現われました。
驚いたケルビンはハリーをロケットに押し込み宇宙に放ちました。
先にソラリスに来ていたスナウト、サリトリウスによると、
ここでは頭の片隅にある現実にはなってほしくない事が、
人間の形で何度も現われるとの事です。
研究者達は、目の前の、海が作った「者」について悩み、
その無意味さ、自分達の無力さについて悩みます。
ケルビンとハリーの不毛とも思える愛の生活が続き、
研究者達は、その「者」を消すための研究を進めます。
研究者達と、その「者」達の運命やいかに。

(感想)
あらすじばかりかテキストまで全文掲載されたフライヤーに、公演前に流れる前回公演の時のビデオ。自分達の手の内をここまで見せる、ということは裏を返せばまず素直な形では上演してくるまいとは思ってはいましたが、一筋縄程度では済まず予想以上にヒネクレた作品でした。
まず、舞台が始まって早速早々奇抜なセットで楽しませてくれます。舞台に水族館のように水が張られ、その中央に円形な砂山の陸地があり、上手からその島に一本の通路が作られていて、役者さん達は、そこから舞台に出入りします。
セリフも確かにテキストの通りではありますが、ぼそぼそと喋ったかと思ったらいきなり大声で怒鳴ったり、演技も時には水の中に入りながらメリハリがなくダラダラと続いていきます。訳の分からないものに対する手ごたえのなさや、コミュニケーションの断絶が身を以って感じられる作品で、観ている最中は正直かなり眠かったですし、とてつもなく疲れました。ただ、厄介なのは演技やセリフがもの凄く間延びしきっているにも関わらず、ギリギリのバランスで物語としてもキチンと成立している点。これがなかったらそのまま本当に眠ってしまえるのですが、物語を追いかけるのに集中力を要し、更に疲れるという悪循環。確信犯でやっているとしか思えないだけに、本当に厄介です。
そういった作品なので、基本的には本であれ、映画であれ、「ソラリス」という作品が前もってあって、それを踏まえた上で舞台でどう表現するかということが前提になっている作品なのだと思います。だとしたら、事前にテキストを公開したのも分かりますが、中途半端にフライヤーに掲載したり前説でお茶を濁して終わりではなく、テキストをできる限り読んでもらうように努力したり、作品の中に「ソラリス」本編の内容が分かるような仕掛けを組み込んで欲しかったとは思います。発想は斬新だと思うのですが、「分かる人だけ分かればいい」という作り手の一方通行さが作品の中に見受けられたのが残念でした。
という訳で、演劇初心者マークの私にはちと荷の重い作品でしたし、演劇を楽しんで見ようとする人には明らかにおススメすることができない作品ではあります。ただ、観終わった後に強烈な眠気を感じながらも頭ごなしに文句が言えないのは、訳の分からない部分も含めて、この作品が「ソラリス」以外の何者でもないということは間違いないからです。
何度も繰り返しますが、本当に厄介な作品を作ってくれたものです。