ヨーロッパ企画「衛星都市へのサウダージ」@THEAER/TOPS

(あらすじ)
人口増加に悩む地球。人類は、その悩みを解消するために、活動の場を宇宙に求めた。この作品の舞台の宇宙船も惑星アルカディアテラフォーミングして住める場所にするための準備をしている、惑星の衛星都市へと向かっている。そこに乗っている人は宇宙に出るのが始めてだったり、慣れていたり、故郷に帰るためだったり、ビジネスや研究のためだったり、その理由はさまざま。
これは、そんな宇宙船に同船した人達の航海中の諸々のくだらないことについて描いた話し。
(感想)
SFタッチの作品というのは映画でも小説でも大抵は、非日常的な光景が多いのですが、この作品は劇団のカラー同様あくまでも自然体。私達がちょっと海外旅行に行くノリで、もし現実に宇宙旅行が日常化したら、現実はこんなものなのだろうと思います。全体的にストーリーとしては大きな流れがなく、宇宙旅行に同船した人達のやりとりや航海中のちょっとしたハプニングを次から次へと起こっていく形で舞台は進んでいきます。大きな流れこそないのですが、それでもダラダラとした印象をほとんど受けなかったのは、細かいネタの数々が面白かったのもありますが、それ以上に作品の世界設定が見た目以上にしっかりつくられていること。何気に凝った映像で、登場人物一人一人の船に乗るまでの背景をドキュメンタリータッチに挟みながら、登場人物達の等身大の日常を上手く描いているのも作品に感情移入しやすくしています。
細かいネタも学生サークルノリの馬鹿馬鹿しいものや、映像を利用したものもありましたが、それ以上に多かったのが、上田さんの言葉を借りると「宇宙まわり」の事や、SFネタのパロディの数々。私もSFについてそんなにくわしくないので全部のネタが分かった訳ではないのですが、SFのお約束のパロディを切り替えしてさらに笑いにしていたりするのを観ていると、「この人達、相当のマニアだわ」って観ている途中に思いました。とはいっても、それらのネタをマニアックな内輪ウケなものにしないで、誰にでも笑えるエンターテイメント作品にしつつ、舞台としてきちんと成立させているあたりはさすがだと思います。
今回は2000年の作品を3作品一挙に再演する「バック・トゥ・2000シリーズ」の最後の作品になります。前2作はほぼ同時期にキャストを2組に分けての上演で、今回はフルキャストの公演。前2作もいずれも良かったのですけど、今回の作品を観ているとやっぱり全員揃ってヨーロッパ企画なんだなぁとつくづく実感。
今回のシリーズ、いずれもハイブローな作品で、3作品全て観る事ができて本当に良かったと思いました。