M&O plays+PPPP produce「ワンマンショー」@シアター・トラム

(あらすじ)
何の懸賞で、どんなモノが当たるのかということには一切の興味がなく、ただひたすら懸賞ハガキを出し続ける一人の男。応募し続けているにも関わらず一向に当選しないことに疑問を感じる彼は、知人の女性から当たらないのは申し込みに必要なことしか書かないから、というアドバイスを受ける。その通りだと思った彼は、懸賞ハガキに応募要項以外の自分のプロフィールを延々と書き始める。やがて彼は、それだけでは飽き足りなくなり、自分の妻や知人の事まで書き始める事になり、やがて・・・。
(感想)
冒頭から意味不明のシーンで、おそらくこれが何なのかが最後の最後に分かる仕掛けだろうというという気は何となくするのですが、舞台はそのあとも良く分からない展開で進んでいきます。それでも途方に暮れずに済むのは、その場面が作品全体のどこの位置づけになるかは分からなくても、そこで何が起こっているのかは比較的分かりやすいからだと思います。小道具は少なめで、衣装も登場人物の名前同様に原色のものが多く、セットはシンプルではあるけど場面展開がスムーズに行われるように随所に工夫が施されています。この辺の緻密で複雑で分かりにくい作品作りと、分かり易く見せる見せ方の上手さ、この2つの舵取りのバランスの絶妙さが、一歩間違えると退屈で自己満足なだけの作風に陥りかねない作品を、観ていて楽しいものにしているのだろうと思います。
もちろん作品の中にすんなり入っていけたのは、脚本や演出のバランスだけでなく、それを支える役者さんの演技があればこそ。豪華な客演陣ももちろんですが(特に小島聖さんはものすごく良かったです)、今回は彼女達と互角以上に張り合ったペンギンプルペイルパイルズの役者さん達の頑張りが光りました。ボケ役でおいしい所を持っていきまくるぼくもとさきこさんと玉置孝匡さん、作品全体を引っ張った小林高鹿さん、皆さんそれぞれ素敵でした。
全くバラバラだった断面が徐々に組み合わさって明らかになっていくクライマックスも圧巻。最後に冒頭のシーンに戻るのだろうということが分かっていても驚かされました。タイトルやフライヤーの意味が分かった時には、その芸の細かさに思わずニンマリとしてしまいました。観終わった後にミステリーのようにパズルが解けた爽快感があるにも関わらず、よくよく考えると物語としては辻褄があってないことだらけというあたりの仕掛けも、意地が悪いくらい巧妙です。
脚本、演出、演技等、全体的にどれも高い水準でまとまっていて、上手さを感じさせてくれる作品でした。今回はプロデュース公演ということだったのですが、この作品をレパートリーとして持っていることは、ペンギンプルペイルパイルズの劇団としての底力を感じましたし、作・演出の倉持裕さんを始めとして、彼等が多くの人達から支持されているのもうなずけます。