ヨーロッパ企画「冬のユリゲラー」@ザ・スズナリ

(あらすじ)
クリスマスの夜、喫茶店に集った5人の男達。彼等は実は全員が超能力者で、彼等の能力に理解のあるマスターのおかげで、は今日一同に会し親睦を深めたり能力を見せ合うことになっていた。そんなお互いの能力を見せ合っている最中に、1人の男が貸切のはずの喫茶店にやって来る。今日集るのは6人と聞いていたので、もう一度最初から能力を見せ合う5人だったが、実は彼は、ただのびっくり人間だった。この力のことが世間に知られたらマズイ彼等は、男を何とかしようとするのだが・・・。
(感想)
超能力ってあったら確かにすごい能力もあるだろうけど、よくよく考えると、科学の前には実は器械や道具を使ったほうが手っ取り早い上に、能力がバレたらバレたでTVでさらし者になったりといろいろ不便なんだろうな、と常々思ってはいます。ただ、それが5人揃うと結構いろいろな悪い事も出来てしまいそうな気がするのですが、この舞台に出てくる彼等はそんなこと思いもつかない小市民達。透視ができたら、女の子の裸を覗いてしまう、念動力が出来たら、嫌な上司張り倒すといった発想しか思い浮かばないあたりのショボさ加減は、笑ってしまうのと同時に、もし自分に同じような能力があったらこんな感じなのかも、という親近感も感じてしまいます。随所に見られるSF的なガジェットの緻密さと、取り上げているテーマの大きさに比べて、実際にそこで起こっていることのスケール感の小ささとのギャップの面白さは、以前DVDで見た「サマー・タイムマシーン・ブルース」に通じるものを感じます。
前半の各自の超能力を見せるシーンは、それだけで1本の舞台でも成立するような面白さでしたし、前半から中盤にかけて張った伏線を回収してゆく後半は大技あり、小ネタありで、駅前劇場の「苦悩のピラミッダー」の出演者が、公演時間のズレを利用して最後の1シーンに登場する趣向もとても面白かったです。
その中で、強いて難を言えば、彼等が超能力を披露するシーンから、6人目の男が登場して盛り上がってゆくまでのシーンまでが、ちょっと間延びしてしまったように感じてしまったことです。上演時間が2時間オーバーだったのですけど、その分だけ長かったように感じたのが惜しかったです。ただ、特に後半からラストにかけてのシーンを中心に、本当に笑わせてもらいましたし、見応えは充分にありました。2000年の作品の再演ということなので、おそらく今回はかなり脚本が変更になっているとは思いますが、それでもこの作品や彼等自身のスタイルの雛型がこのころ既に作られていたいうのは本当に凄いことだと思います。