ONEOR8 B面「コルトガバメンツ」@ニッポン放送イマジンスタジオ

ike32007-05-20

申し込みの抽選に当選したので、ミニコミ、マスコミライター限定のプレビュー公演に昨日行ってきました。女性や家族といった題材を描かせると定評のある劇団ですが、今回の公演では以前、東京ハートブレイカーズのために書き下ろした男達4人が登場する作品をB面公演という形での上演になります。私の場合、彼等の作品を拝見するのが、前回公演の「電光石火」に引き続き2度目になるので、正直何がA面で何がB面なのかは今一つ分かりにくかったですが、登場人物1人1人や彼等の関係が丁寧に描かれたいい作品でした。

(あらすじ―サイトより)
ある男がモデルガン(コルトガバメント)を持って来た。
右の男は本物の拳銃に改造できると言った。
左の男は三億円事件の犯人の息子と名乗った。
男たちは企んでいる。
僕はその話を聞いてションベンをちびった。
もう、いい大人なのに。

お母さん、ごめんなさい ― 。

(感想)
あらすじやフライヤーのイメージから、個人的にはもう少しハードボイルドで突飛な物語なのかなと勝手に想像していたのですが、話しの方は30過ぎの等身大の男達が、小学6年生以来久しぶりに再会する姿を描いた物語です。見るからに30過ぎの独身の男の部屋で繰り広げられる話しはやや地味でこそありますけど、19年ぶりの再会という距離感と登場人物の姿がとても丁寧に描かれた作品です。題材やテーマは通常の本公演と若干異なるのかもしれませんが、見た目はやや地味(ものすごく失礼ですみません)ですが、見応えのある作品です。
前半ちょっと話が停滞していた感がありますけど、途中から話しが転がりだすとあとは抜群に面白かったですし、その停滞した場面も観ているその時はややもの足りなさを感じたのですが、そこで入るエピソードが登場人物達の人物造形に肉付けをしたり、彼等の関係を補完するエピソードになっており、登場人物の内面を厚みを出す効果になっています。随所にスライドの映像やテロップを使う演出もなかなか面白くて、夢の中の出来事と現実との出来事や19年前と今との時間の場面転換や、場の外の出来事を描く役割を担っていて、作品にテンポと奥行きを与えてくれます。
小学生の時にやった彼等が考えたくだらない遊びを懐かしくて19年ぶりにやってバカ騒ぎしてみたりといった場面はほぼ同世代の私にとってはとても共感できましたし、同窓会での会話が昔と比べて「変わんないね」か「変わったね」というどちらからの会話から始まって自分の自慢話をして今の仕事の愚痴を言って終わりっていうくだりなんかは、観ていてギクっと来るものがありました。
作品全編に、夢と現実のギャップや19年という時間の取り戻せない、ビターさや棘の刺さったようなうずくような痛みを感じるのですが、同時にそれを包み込んでしまうような優しさを持った作品だなと思いました。他の方が観てももちろん面白いかと思いますが、作中の登場人物と同世代の男性には特に共感できる作品ではないでしょうか。
(ONEOR8 B面について)
終演後ポストパフォーマンストークがあったのですが、それによると通常の公演ではできない毛色の違う作品の上演する試みだそうで、今回は家族や女性をテーマに描く事に定評にある劇団のイメージや、基本的にあてがきで脚本を書く田村孝裕さんの方向性とは別に、男性のみのユニット「東京ハートブレイカーズ」のために書き下ろした作品をONEOR8版としてシナリオに変更を加えた上での上演になるそうです。今後についてはB面の活動予定については未定ですが、田村さん以外の外部作品の上演や、田村さんの好きな向田邦子さんの作品を取り上げたいそうです。蛇足になりますが、田村さんが向田邦子さんのファンだったというのは作品を観ているとものすごく納得できるものがありました。

※写真については劇団さんからご提供いただいたものを使用しています。