あひるなんちゃら「屋上のオフィス」@王子小劇場

ちょっと古くなってしまったのですが、ゴールデンウイーク中に行った舞台の感想を
(あらすじ)
折りたたみテーブルを挟んで、向かいあってすわる若い男女。そこはオフィスで、今は仕事中だという。普通だったら何気ない日常の光景なのだが、けどそこは屋上で屋根がついていない。雨が降ったら会社は休み、おまけに、何かの研究に関する仕事という以外は何の仕事なのかも分からず、2人は社長とは会ったことがなく、仕事についてのやり取りはいつも手紙でやっている。その手紙を下の階の会社の男が持ってくるが、その男は彼等のもとを必要以上に訪れる。
そんな、何かおかしな光景。けど、ヘリコプターの音とともに何事もないかのようにダラダラと日常は続いていく。
(感想)
1度ぜひ観てみたい劇団だなと思っていたら、たまたま「プライスレス」というチラシを見かけたので、ちょうどいい機会なので観に行ってみることに。
起こっていることは結構ヘンな出来事です。普通の劇団だったら、このヘンな状況を作り出すことや、それをいかに劇的に盛り上げるのか、ということに腐心するものだと思うのですけど、彼等を見るとその「ヘン」な出来事をあえて何ごともないかのように演じているように感じます。正直、大きく吹き出してしまうような面白さは全くないのですが、その替わり上演中ずっとくすくすと笑ってしまったのは、実際に起こっていることの奇妙さと、実際にそこで演じられていることとのズレの面白さなんだろうと思います。派手さはない(というより派手さを否定している)のですが、見た目以上にユニークな感性の持ち主です。
舞台の方は、セットも最低限のシンプルなもので、役者さんも劇団に所属している3人による淡々とした会話劇です。タイプの全く違う2人のボケを残りの1人が拾っていくコントのような作品です。作品や役柄の組立ては結構オーソドックスですけど、役者さんの演技や、言葉選びのセンスがとてもスマートなので、ベタな印象は受けません。会話のやり取りがとても面白く、演劇ではなくラジオドラマとかでも通用しそうだなと思いました。
冒頭に書いた通り「プライスレス」なので、本音を言うとそれなりには面白いだろうけど、大きな期待までは酷だろうと思って観に行ったのですが、観終わった後に「お金では買えない価値がある」と思えるくらい面白かったです。今度は別の作品を、入場料を払って観に行ってみたいです。