ニブロール「no direction」@パナソニックセンター東京 有明スタジオ

演劇以上にダンスのことは良く分からないのですけど、以前行った矢内原さんのソロ公演が予想以上に面白かったので観に行くことに。
広い平面スペースに扇形の巨大なスクリーンで、観ている側はややきつめの斜面に座布団を置いての鑑賞で、通常の演劇よりくつろいだ気分で見れた半面、翌日はかなり腰が痛くはなりました。ただし、場所選びの段階からかなり考えているようには見受けられます。
ダンスはもちろんなのですけど、映像、音楽、照明、衣装を含めた空間作りはすばらしいものがあり、ダンスのことが良く分からない私でも会場に足を運びたくなる大きな理由なんだろうと思います。
結局その空間で起こった出来事を、どう読み解いていけばいいのか、もしかしたら大きな意味なんかないかもしれないとも思います。ただ、自分なりに感じたことを書くと、まずはタイトルは「no direction」となっている通り、時には交わらなかったり、衝突したり、集中したり、拡散したりといった様々な形の方向性の定まらないさまが描かれている作品だったのかなという気がしました。役者さんの名前と顔をあえて一致させない匿名性を持たせることにより、彼等の動きが時には分子の不規則な動きに、そして時には人間のコミュニケーション、特に一対一の時には愛し合う人達、多人数の時には都心を歩いている人達、に見えたりしました。この作品を観ていると、方向性の定まらなさというのと同様に、人間の距離の定まらなさ(no distance)というのを同じくらい感じました。
それと同様に感じたのが、彼等の表現しようと思っていることが、実は深く日常に根ざしているのではないかということです。様々なジャンルのクリエーターが集っているということや、モダンアートを連想される空間作りから、一見すると日常からかけ離れたできごとが舞台で展開されているように見えます。ただ、よくよく考えてみると今回の公演のダンスのベースになっている動きって、歩く、走る、触れる・・・等といった私達が日常で当たり前のようにしている行動なんだろうと思います。
逆に言えば、日常に根ざしていながら、これだけ創造力豊かな空間を作り出すというのは本当に凄いと思いますし、ダンスが良く分からない私でも充分に見応えのあった公演だったと思います。