KAKUTA「甘い丘」@シアター・トラム

(あらすじ)
町外れの丘の上にポツンとあるサンダル工場。そこの労働条件は劣悪な上に、夏になると暑さのせいで強烈なゴムの臭いを放ち、冬は凍えるように寒い。
そういうこともあってか、そこで働く人達は、そこでしか働く事のできない訳ありの人達ばかりで、町の人間達は彼等のことを軽蔑していた。
そんな工場に2人の女性が仕事を求めてやってくる。一人は会社の金を一億円横領して刑務所で服役していたという若い女性。もう一人は、夫が別の女を作って出て行ったために住む場所も生きる糧も失ってしまった主婦。2人は工員と世話人として、この工場で住み込みで働くことになるのだった。
(感想)
劇団の作品としては始めて観たのですけど、客演の人達を含めて、この劇団ってものすごくチームワークがいい劇団なんだろうって思います。特に、中盤から後半にかけてのクライマックスの部分は、1つの結論に向けて作品を全員で作り上げていこうという一体感がものすごく感じられました。作品自体も人間関係やエピソードの一つ一つがしっかりと丁寧に作られていてとても好感のもてる作品でした。全体的に作品の仕上がりも良かったですし、本当なら観終わったあとにとてもいい感触がのこるはずなのですけど、なんかしっくりこない違和感がして仕方がなかったです。
その原因ってやっぱり、第一幕にあるのだろうと思います。この作品のテーマについてはさまざまな見方ができます。私個人は「落ちようのないどん底にいると思っている女性が、その場所で新たな生き方や可能性を求めていく」といった感じに受け止めました。そうなってくると再生の場面を劇的なものにするためは、「どん底」の部分をいかにしっかり描いていくかが大切だと思います。しかし、何かその部分が綺麗すぎて生々しさや、リアリティを感じられないので、後半の部分も登場人物達の人生を描いているというよりは、学生の体育会の部活動を見ているような青臭さを感じてしまいました。演技だけでなく、見栄えいい役者さんが揃っているのですけど、今回に限っては、その見栄えの良さが災いしたように感じます。
いろいろな劇評を読んでいるとこの作品が「今までと違った大人の作品」と書かれているのを目にするのですけど、始めて観た私にとっては「大人になりきれない大人達の作品」といった良く言えば過渡期的な、悪く言えば煮え切らない印象を受けました。ただ、これって良し悪しというよりも、むしろ好き嫌いの問題なんだろうと思います。
作品自体はとても良くできていますし、自分達のスタイルを最後まで押し通してやりきったあたりは好き嫌いとは別に大したものだと素直に関心します。それにああだこうだいいながらも、私自身、青臭いのが嫌いじゃなかったりします。