前田司郎「恋愛の解体と北区の滅亡」

この本を読みながらずっと思っていたのは、果たして著者の前田さんは理性の人なのだろうか、それとも感覚の人なのだろうかっていうことです。感覚的だと決め付けるには言葉や会話を執拗に掘り下げていこうとしますし、理性的だというにはこの小説に出てくる登場人物達の行動は本能むき出しで、その姿がどこか私小説風でもあります。
宇宙人に地球を侵略されてもツタヤでDVDを借りたり、SMクラブで女王様プレイをしてしまい、なんとなく日常をやりすごしてしまう。かと思うと、スクール水着一枚が物語の大きなクライマックスになってしまう。そんな、私達、一般人の日常と非日常、常識と非常識をひっくり返したような感じが独特で、読んでいて何とも不思議な感覚のする小説でした。
ISBN:4062134209:DETAIL