双数姉妹「トリアージ」@THEATER/TOPS

プロレスファンにとっては、舞台俳優としてよりも、マッスルの鶴見亜門としてのほうがおなじみの今林久弥さん(一説ではそっくりさんという話しもありますが)の所属する双数姉妹の公演を観に行ってきました。
先月の20日に行った、晴海のプロレスイベントに登場していたので、舞台の前にこんな所にいていいのかよと、ものすごく心配だったのですけど、今回の公演を観る限りでは、ちょうどいい息抜きになったようです。正直、最初の内はちょっと心配だったのですけど、なかなか面白い舞台でした。
(あらすじ)
南の島の日本人の経営するレストランで事故が起こり火災が発生した。燃えさかる炎の中救出に向かう消防士2人。
そこに倒れている瀕死の男が2人。一刻も早く助けなければならないのに、担架も足りなければ人手も足りない状況では、一度に2人を助ける事はできない。
そんな中、2人の消防士が取った選択とは一体……。

トリアージ…治療、救出の優先順位をつけること。もしくは単に「選別」の意。
(公演のチラシより)

(感想)
冒頭の消防士役の2人が事故に巻き込まれた2人を救うシーンは照明やセットの関係もあってかどこかシリアスで暗く重苦しいトーンから舞台が始まります。さて、これからどうやって話しを広げていくのかと思っていたら、舞台は一転して負傷した2人が事故に会う前の回想シーンに場面が変わります。その場面で歌われるミュージカルタッチというにはあまりにもチープすぎる劇中歌の数々には、笑いを通り過ぎ失笑さえ浮かんでしまいます。それで終ればただの駄作なのですけど、その後、シリアスなシーンやコミカルなシーン、そして劇中歌の数々を盛り込みながら、舞台は実にさまざまな顔を見せだします。間に通訳が入ることによりコミュニケーションがズレていくさまを描いた会話劇の要素や、観光開発の名目で現地の人間を食いものにしていく日本人を描いた風刺ドラマの側面があったりと、舞台の所々を切り取るとまるで別の作品とさえ思えるほどです。これだけいろいろな事をやっているのに、観ていて意外な位すっきりとした印象を感じるのは、ストーリーの軸がブレていないのと、舞台の組立ての絶妙な上手さがあるからでしょう。最初のうちは失笑してしまっていた劇中歌も、効果的に使われることによって、ここぞという時には感動さえしてしまいましたし…。この辺というのは、演劇の枠組みをきちんと理解していて、その境界を自由自在に操る、演出家の小池武見さんを始めとした、この劇団の円熟した力というものを感じました。
比較的重いテーマを真っ直ぐな視線で捉えながらも、あえて照れ隠しのように笑いに包んだところをどう受け止めるかによって、人によっては不快感を感じたり、好き嫌いが分かれてしまう作品だとは思います。更に、役者さんの力量差や演技の出来にややバラつきが大きいと感じた部分はありますけど、私個人は全体的にバラエティーに富んでいて楽しく観れる作品だと思いました。