PEOPLE PURPLE「ENDLESS TRIP」@東京芸術劇場

(大雑把なあらすじ)
今から100年後の世界。そこは真っ黒な空に覆われ、太陽を見ることさえできず、人々はネオアースという組織によって恐怖と暴力で支配されていた。そんな彼らに立ち向かい、争いのない世界を作ろうとする青年達。そのなかに、かって彼等の育ての親であるシスターに命を救われた少女・ジュンがいた。
一方で、舞台は現代の大阪。姉や、姉の同僚の編集者の青年などに囲まれて、ささやかながらも幸せに過ごすマキ。
この離れた時代を生きる二人の女性は、目が見えないほかにさまざまな部分で似ていた。そして彼女達こそが、100年後の先の世界に希望をもたらす「光」だったのだった。
2人を付けねらう、ネオアースのキガミ。彼女達を命懸けで守る青年達。制限時間は24時間。彼女達を、世界を守るため、時を超えた戦いが始まった。
(感想)
物語は現代と100年後の未来とが交互に展開していき、やがて2つの時間やさまざまな伏線が1つのクライマックスへと収束していきます。まず、面白いなあって思ったのが、その場面が展開していく演出です。音楽の切り替えや、照明の光の変化を利用したり、シーンごとに役者さんの入れ替えを工夫することによって、途中でお芝居がほとんど途切れることなく進行していきます。それによって生み出される疾走感がとても心地よかったです。そして、このスピーディな展開によって、二時間という時間とは思えないヴォリュームのある内容をうまく詰め込むことができていると思います。そのことが災いして、場面によっては展開が強引になってしまったり、細かい部分でストーリーが未消化になってしまった部分はあるのですけど、そんな欠点がささいなことだと思えるくらい、突き抜けたスピード感とスケールの大きさとがありました。
そして、切れ目がほとんどないお芝居にも関わらず、2時間まったくといっていい位退屈する場面がなかったのは逆に凄かったです。それも、内容的にヴォリュームがあったという他に、コミカルな部分とシリアスな部分とのメリハリがしっかり利いていて、笑うところではめいいっぱい笑い、手に汗にぎるところではハラハラし、ラストではしっかり感動させてもらったからでしょう。登場人物も結構出てくるのですけど、人物ごとにユニークなエピソードを加えたり、それぞれタイプが異なる役者さんがはまり役だったり上手く演じわけたりしていたので、キャラクターごとの個性も良く出ていて、彼らに感情移入しやすかったです。
エンデイングは少し出来すぎかなあっていう気はしましたけど、そう思いながらも二転三転するラストには心の中で思わず「やられた」って叫んでしまいました。(ネタバレになるので書きませんが...)ただ、「人は人自身の力で決められた運命を変えることができるのか」ということがこの作品のテーマの一つでしょうから、この物語がハッピーエンドになるのは必然なんでしょうし、私自身も「そうであって欲しい」って思っていましたし、見終わった後もいい余韻を残すことが出来たので、これで良かったのかなあって思います。
作品の中で、彼等が世界や愛する人達を守るために運命に立ち向かったように、100年後の世界をこの物語のような世界にするのも、青空の見える平和な世界にするのも、結局は今ここにいる私達ひとりひとりどのように生きていくのかに掛かっている、この作品の中からそのようなメッセージを感じました。そういった、能書きは置いておいても、細かい理屈抜きでも純粋に楽しめる公演でした。
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