キャラメルボックス・ハーフタイムシアター「あしたあなたあいたい」「ミス・ダンデライオン」@シアターアプル

先日、シアターアプルで行われたキャラメルボックスのハーフタイムシアターを見に行ってきました。今回は去年の冬、梶尾真治さんの作品「クロノス・ジョウンターの伝説」を原作として上演されたされた「クロノス」の続編とも言える作品です。家に帰った後に会場で買った「クロノス」のDVDを見ていたのですけど、キャストや舞台設定が巧みにリンクしていて、芝居の内容そのものもそうですけど、そういう部分でも面白かったです。
肝心の公演の方なのですけど、もともと梶尾さんの原作が三本の中篇からなっていて今回は、「クロノス」でやっていない残りの二本の作品をそれぞれ一時間ずつで上演しています。この三本全てに共通しているのが、欠陥タイムマシンともいえる物質を過去へ飛ばす装置「クロノスジョウンター」で過去に飛んだ人間の話しだということ。この、自分を過去に飛ばす代わりに様々な制限があり大きすぎる代償を求められるという見事な設定が、物語をスリリングにかつそこに出てくる人たちの出会いを切ないものにしています。原作の方は以前読んだことがあるのですけど、今回の舞台では原作の見事な設定をベースにして、原作ではややもの足りないと思っていた登場人物の人間関係や心理描写をうまく脚色した作品になっています。最初の方は、ストーリーの大雑把な流れが分かっていたこともあって、お芝居の方にいまひとつ入り込めなかったのですけど、原作にでてこない人物の登場やメリハリの利いた展開に途中からは思わず見入ってしまいました。
作品一本あたりが一時間という制限があったこともあって、ストーリーの流れにちょっと強引だなと思えたり説明不足だなと感じた部分があったり、「クロノス」も含めて三作全てに登場するクロノスの開発者・野方(西川浩幸さんが演じている)のキャラクターが作品によって微妙に違っていないか?といったツッコミたい部分も少しだけあったのですけど、全体的には前作や原作の雰囲気をうまく生かしつつ制限のあるなかで「上手くまとめたなあ」という印象の公演でした。
ここの所、興味があってキャラメルボックス以外のお芝居も見に行くようになったのですけど、他の劇団と比較して場面の切り替えや、緩急の付け方というのはやっぱり上手いなあって思いましたし、スタッフの人達の対応の良さというのも改めて感じました。いちげんさんにも優しいので、一番最初に見た舞台がキャラメルボックスだったというのは、私にとってはもの凄く運がいいことだったと思いますし、一年前の私のように「舞台に興味はあるけど、ちょっと...」という方には、とりあえずどちらか一本だけでも見てみるのもいいのではないでしょうか。どちらか選べと言われたら、個人的には「あしたあなたあいたい」の方が面白かったです。