リュカ.「WHITE PHASE」@王子小劇場

前置きにも書いた通り、王子に近辺でやっていたというだけの理由で見にいったのですけど、(劇団の皆さんのは申し訳ないと思います。ただ、こういう理由で見に来た奴が一人位はいてもいいのでは.....。)動機と予備知識ゼロの状況にも関わらず、公演そのものは結構楽しく見る事ができました。実は池袋まで出て映画をみようかどうしようか少しだけ悩んだのですけど、今回はお芝居の方を選んで正解でした。

(ストーリー)
人里はなれたある研究所兼温室。そこを売れない作家・野口が訪れる。彼は、研究所の責任者で大学時代の恩師である湯村教授からの「君に見せたいものがある」という手紙を持ってそこにやってきたのだ。しかし、そこには教授はおらず、変わりにかっての同級生で今は教授のもとで助手として働いている橋本と長谷部の二人と再会する。
彼らが、温室で育てている薬草。それはかって湯村との会話をヒントに書いた野口の小説にでてくる薬草にそっくりなものだった。その薬草を巡って人々の様々な思惑が交差していき、そこで働く研究者達や、スポンサー企業の職員、更にはそこで暮らしている教授の妻や妹までも巻き込み、事態は悲劇へと進んでいく。
果たして、彼等の運命はどうなるのか、そして、教授が野口に「見せたかったもの」とは何なのか。
静かで、せつなくて、そして優しい物語。


最初は少しユルめの入りだったので大丈夫かなあって思ったのですけど、後半からはいい意味で緊張の連続する展開が続き、それが最後まで続きました。場面の展開を多めにして、二人から三人の登場人物が会話をしていくというシーンが多用されていて、それによって登場人物のひとりひとりや、人物間の人間関係といったものがかなり深く掘り下げられているのには好感が持てました。ただ、後半が息詰まる展開がずっと続いたので、途中でどこかリズムを換える展開を持ってくるか、芝居そのものの時間をコンパクトにするのかした方が、メリハリがあってよかったのかと思います。
意外性はあまりないですけど、丁寧に作りこまれたストーリー、セットも含めて全体的に静かで繊細なトーン、そんな部分が印象に残った作品でした。個人的には、癖があってどこか屈折した湯村教授役の中田さんと、一見すると地味なんですけどポイント、ポイントでツボを押さえた演技をする橋本役の宇和川さんの演技が良かったかと思います。
自分では相手のことを理解しているつもりでいても、実は相手は全く違ったことを考えていて、それによって起こるコミュニケーションのギャップ。そして、本当の意味での相手を理解することの難しさ。この物語では、さまざまな人と人とのつながりを通して、そのことを訴えかけています。ただ、この作品はその困難さに対して決して絶望しておらず、完全には相手を理解できなくても、どこかでお互いが分り合える部分がある、そんな可能性とか希望といったテーマが内包されていると思います。ですから、作品全体に重さを抱えながらも、どこか温かさも感じてしまうのでしょう。
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