カムカムミニキーナ「軍団」@シアター・アプル

(あらすじ)
少し離れた場所に対峙する2つの「軍団」。一方には刑事達の「軍団」、そしてもう一方には、彼らと対立する謎の「軍団」。かつて刑事達の「軍団」の団長に壊滅させられた彼らは、団長の妹を人質に取って、アジトに引きこもっている。にらみ合う2つの「軍団」。双方とも次の打ち手が見つからず膠着状態が続いていたが、そんな時、本庁の調査官と名乗る女性が団長達の元を訪れた事から・・・。
(感想)
あらすじはとりあえずはこんな感じなのだろうとは思いますが、基本的にはストーリーにはほとんど意味のない作品なんじゃないかという気がする作品。それこそ作品のそこらじゅうに「いくらなんでもそれは強引過ぎるだろう」と思われる人物設定や筋立てが存在するのですが、それでもそんな強引さを力ずくでねじ伏せてしまうパワーが存在します。それは役者と作品の生み出す力なのでしょうが、ただの力ずく一辺倒ではないのは、作品の中でふと見せる人間くさい愛憎劇がなかなか奥深かったりするということも大きいです。この辺は、一見馬鹿馬鹿しいだけの作品のように見えても、なかなかあなどれません。
フライヤーの役者さんの格好やタイトル、果ては開演前に流れる石原裕次郎のヒット曲の数々で一目瞭然のように、もともとは某軍団の刑事ドラマが元ネタ。その中でも団長を演じた松村武さんはその姿だけでも爆笑もの。ただ、非凡なのは刑事ドラマのお約束を踏まえながらも刑事側の役者さんのそれぞれが、いずれも独自のキャラクター像をきちんと作り上げていること。特に藤田記子さんや佐藤恭子さんは本当にいい味を出してくれています。犯人サイドの「軍団」のほうもこの劇団の看板の八島智人を中心に個性的な役者さんが脇を固めています。松村さんと八島さんという劇団の看板役者2人がぞれぞれの軍団のやり取りはなかなか見応えがあります。
ただ、残念だったのは、脚本の問題で、役者さんや作品の本来の持つパワーが半減してしまい、作品そのものがかなりこじんまりした印象を受けてしまったことです。軍団内部の出来事は上手く書かれていると思うのですが、軍団同士の抗争の描き方が不十分だったため、作品に広がりが見られなかったり、この舞台で一番期待していた松村さんと八島さんの絡みが極端に少なかったことになって、観ている途中にやや物足りなさを感じました。
ただ、これは脚本よりも演出に問題があったのかも知れません。作品のかなりのウェートを軍団内部のやり取りが占めているのですが、これがそれぞれ舞台の下手半分と上手半分で行われています。その間、舞台が使われているのは半分だけ、これが作品を必要以上のこじんまりさせてしまった最大の原因ではないかと思います。
もし、もっと舞台をフルに使いこなせていたり、会場が小さかったりしたら、随分と印象が変わるでしょうし、演じる役者さん達の底力は感じましたけど、もっと突き抜けた作品を作ってほしかったなあ、と思います。自分が勝手に期待しすぎてしまった部分もあるとは思いますけど・・・。