経済とH「FLOWERS」@青山円形劇場

(あらすじ―公演のチラシより―)
夏、東京、花火大会。
川沿いのマンションの屋上に集まり年に一度の花火を見る人たち。
それは、どこにでもある美しい花。愛
する幸せを知ってる花。いつかは枯れてしまう花。
すばらしい人生という花。

(感想)
佐藤治彦さんが主宰されている演劇ユニットの3回目の公演。今回は、脚本がONEOR8の田村孝裕さんで演出が文学座の坂口芳貞さんという組み合わせで、隅田川の花火大会当日のマンションの屋上で繰り広げられる会話劇です。派手さこそはないのですし、マンションの住民同士の会話はいわゆる「今」を切り取ったものでは決してないとは思います。ただ、そういったことを差し引いてもよく出来た「上手い」脚本ですし、この作品の魅力は田村さんの脚本抜きには語れないと思います。一見すると本筋とは全く関係のない雑談をしているなと思っていると、ふとその隙間から垣間見えてくる、登場人物達の悩みとか確執といった、私達が生きていくうえで避けて通る事が出来ない思いや、さまざまな人間模様が何ともいえず素敵な作品です。
この作品ではマンションの屋上にさまざまな人が出入りをし、その結果登場人物がとても多くなっているのですが、それでも自分でもびっくりするくらい分かりやすく見やすかったですが、これは決して話そのものが単純だったからではなく、サラリとやっているように見えて、物語や登場人物の交通整理がよくできていたからだと思います。この辺は、田村さんの脚本の「上手い」部分ですが、それと同時にその本の持ち味を引き出した坂口さんの演出があったからこそだと思います。あからまさにそう見せないことで舞台が品の良い仕上がりにしているのが、坂口さんの非凡な所だと思いますが、一方では観る人によっては物足りなさを感じてしまうかもしれません。私は個人的は良かったとは思いますが、ただ円形劇場の客席の奥手を使ってマンションの階層の上下を舞台の使い方についてはやや疑問を感じました。距離感を出すにはいい演出だと思うのですが、とにかく見づらいですというのは一番の問題です。それでもこれだけ出自やキャリアがバラバラにも関わらず力のある役者さんが多数揃ったにも関わらず、その一人一人の持ち味を出しつつ、出しゃばる役者を作ることなく、一つにユニットをきちんとまとめあげただけでも素晴らしいです。このユニットとしてのまとまりのよさが、最後の登場人物全員で花火を見るシーンの美しさにつながっていったのではないでしょうか。これについては自分の役割にきちんと徹した役者さん達を褒めるべきなのかもしれませんが。
このユニットの公演は旗上げから拝見させていただいているのですが、正直過去2回については、役者さんの力量があるにも関わらずそれが充分に発揮されていないというフラストレーションがありました。今回については、脚本家、演出家、強力な客演の役者さん達に助けられたとはいえ、ようやく「このユニットはこんな事がやりたかったんだ」というものを見せてもらったように感じます。自分の中では、もしこの公演の出来が今一つだったらこのユニットの舞台作品は当分は観ない位のつもりで行ったのですが、こういう作品を作れるのであれば、今後の活動が楽しみになってきます。