PEOPLE PURPLE「crystal EVE」@六行会ホール

(あらすじ)
2135年、核戦争によって一度は滅び去った地球。
その直前に宇宙に飛び立つ事により辛うじて滅亡を逃れた人類は、800年後再び地球へと帰還する。
核汚染された地球を、再び人類の住める惑星にするために大きな貢献をした老科学者・リサには、人生で一つ大きな悔いが残っていた。
それは50年前のこと。地球上で唯一残っていたホンモノのクリスマスツリーの下でその日を過ごそうと誓った恋人の事。仲間にスパイの疑いを掛けられ、離れ離れになってしまったあの日の事。
50年前の彼を何としても救いたい・・・。その一途な思いで彼女が生涯をかけて発明した時間移動装置を使って、彼女は孫と2人で50年前へと旅立っていったのだった。
(感想)
けれんみのないストレートプレイと断片的なシーンを切れ間なくつないでいくことで上演時間以上のボリュームを生み出すことがこの劇団の作品のいい所で、過去の公演ではこの手法が上手くいっていました。確かに今回の公演もアクションあり、ダンスあり、ロマンスありと内容盛りだくさんでボリューム的には充分に楽しめたかと思います。ただ、残念ながらそのボリュームを充分に消化しきれていないという感がしたのも事実です。
特に目が付いたのが、まずはシナリオの問題。タイムトリップSFの基本というのは時間を移動したことによって生じるタイムパラドックスをいかに辻褄を合わせるかというのが醍醐味でもあり、作り手の腕の見せ所なのですが、ここの部分が整合性を持ってきちんと処理できなかった点。演劇という部分で多少はいたし方ないかとは思いますが、今回はシナリオの強引さが目に付きました。
更にもう一つ強引だと思ったのが作品のつなぎ目の部分のつなぎ方。作中に本公演の作品のセットでは表現しきれないシーンがありました。それを強引に作品に盛り込んだために断片を上手くつなぎ切れていないなと感じる部分があり、彼らの長所が逆に欠点を強調してしまう効果になってしまったのが残念です。
役者さん達も、女優さん達や客演の篠田剛さんを始めとしてなかなか魅力的な役者さんが揃っているのですが、今回は一部を除いて充分に活かしきれていませんでした。
筋立てや演出の強引さは目立ちましたけど、ストレートプレイを貫きエンタメ作品として最後まで楽しませてくれた点は評価できるかと思います。ただ、新作ではなく過去の再演作品ということも含めて、彼らの力を考えると物足りなさが残る公演でした。特に再演の多さが劇団としての新味の乏しさにもつながっていますので、そろそろ新作を発表して欲しいです。