大川興業「THE BACK OF BLACK」@ザ・スズナリ

(あらすじ)
暗闇での芝居は、役者だけでなく裏方も過酷だ。舞台ばかりでなく、控え室やトイレまで真っ暗にし、その中を形や臭いを手掛かりに目当てのものを探す小道具や音響。観客の想定外の対応に振り回されながらも、時には覗き見根性から見学者と化す客席スタッフ。暗闇ならではのハプニングの連続を、最初の演出プランから大きく逸脱しながらも、行き当たりばったり的に何とか切り抜けてゆく舞台監督とそのスタッフ達。
これは彼等の実話に基づいて描かれた、暗闇劇の舞台裏の壮絶な物語である。
(感想)
私にとっては去年に引き続き二度目の大川興業の暗闇劇。始めての時は、テレビでのイメージが強かったせいか、暗闇の中果たしてこの人達に身を委ねて大丈夫なのか?といういささかの不安もありましたが、流石に二度目になると多少は落ち着くものだと、一人勝手に納得。ただ、暗闇に入るときは、潜水艦で深海に潜るような感じがして緊張します。
今回は、暗闇劇の舞台裏を描いたということもあって、硬派ながらも大川興業らしいお笑いをふんだんに取り入れた作品で、舞台スタッフと子どもの幽霊の交流を描いた切ない話を中心の軸に入れ一本筋は入れてはいますが、1つの舞台作品を描くというよりは、過去の公演のアクシデントを軸にしたネタ集といった要素が強い作品です。そのせいもありますが、臭いや音についてのハプニングや途中で闇くらいまで明るくして舞台上で何が起こっているか見せるシーン等も取り入れて、暗闇劇の仕掛けのタネを見せる場面も取り入れられていて、ライトユーザーにも楽しめる作りになっています。暗闇の中でどうやって笑わせるか、とかお客さんに作品を見せるのか、と言ったツボをきちんと押さえていて、この辺は付け焼刃では決して出来ない過去のノウハウの積み重ねの重さを感じます。例えば、暗闇で線香花火をするシーンなんかは、実際に客席にはどういう風に見えるのかがきちんと分かっていないと奇麗な見せるのは大変だと思うのですが、劇中でとても効果的に使われています。
ただ、作品を観て気になったのが、私が行った回が初日だったということもあるのでしょうが、舞台がきちんと固まりきっていない印象を受けたことです。冒頭の場面で完全に暗闇になりきっていなかったり、セリフや役者さん同士のやりとりが、暗闇ということを差し引いても甘いなと感じた部分が少し多かったように感じました。
あともう一点気になったのが、劇中スピーカー通してセリフを言う場面を多様しすぎて、作品の臨場感がやや壊れてしまった点です。確かに回想シーンや舞台上の役者との距離感を出すには効果的だと思うのですが、折角の暗闇劇なのだから、もっとライブ感を強調して欲しかったです。
それでも、暗闇の中で長時間じっとして舞台を見ているうちに五感が鋭くなっていくなどといった経験は、大川興業の舞台意外ではまずお目にかかることのできるものではなく、一度経験すると結構クセになります。