シベリア少女鉄道「永遠かもしれない」@シアターグリーン BIG TREE THEATER

売れない男女の漫才師の中の男の方が事故に巻き込まれ、もと相方、姉、恋人をまとめて亡くし、恋人の妹もその漫才が終ったらロンドンに旅立つという前振りから、まず舞台は始まります。なかなかいい出来だとは思いますがベタ過ぎるくらいベタなお約束な展開。けど、前置きから予測不可能なとんでもない方向に落ちる展開が得意な彼等にとっては、ベタな位がちょうどいいのかもと、こちらも序盤は肩の力を抜きまくって観ています。
やがて、2人の漫才のシーンが始まります。最初のうちは「まあプロの漫才師じゃないしこんなもんなのかな」という軽い気持ちで観ていたら、ひたすらハイテンションかつ面白くはなってきましたが、一方で「このテンションでずっとやっていったらプロでも上手くオチをつけるのは大変だぞ。まさか、これを最後まで延々とやり通して『永遠かもしれない』なのか?それをやったらかなり痛いけど、彼等ならやりかねんなあ」という嫌な予感がしました。その予感は半分は当たりましたが、半分ははずれました。この漫才が引き金になって収拾のつかない世界に入り込んでしまうという点では正解でしたが、漫才のネタを引き金にRPG、白雪姫、タッチ、忠臣蔵、キャッツアイ、海猿・・・etc。テレビやゲームやコミック等、さまざまな作品のパロディがこれでもかとつながりながら延々とつながっていき、文字通りタイトルどおりの世界に迷い込んでしまいます。私の中でのこの劇団のイメージというのは「無駄に壮大な前置きと、誰も思いつかない馬鹿馬鹿しい大仕掛けなオチ」というイメージがあります。確かに今回もラストには某国民的アニメの大仕掛けのパロディがありましたけど、基本的にはラストの仕掛けよりも、そこに到るまでの前置きの取り留めのなさと、これでもか、というくらい詰め込んだネタや仕掛けの数々が面白かった作品です。この辺は、自分達のイメージを逆手に取ったのか、それともお蔵入りしかけたネタの在庫一層セールをしたかったのかは判然としませんが・・・。
1つのネタがいつの間にか1周して全く別の場面で使われたり、終らせないために言い回しを故意にダラダラとくどくしてみたり、それが2時間以上続くので、正直観終わった後にものすごく疲れましたし、「時間やお金を使って自分は一体何をしているのだろう」という徒労感や虚しさというものを、全く感じなかったかといえば嘘になります。ただ、一見するとまったくバラバラなものがつながっていく流れや、時にはくどいと感じるくらいまでの仕掛けや笑いの数々には、本当に笑わせてもらいましたし、その発想の柔軟さにはいろいろと驚かせてくれました。漫才のシーンのボケ、ツッコミ役が、いつのまにか逆転しながらも、演劇の中でも漫才が成立していたり、漫才をやりながらも演劇という舞台でしか出来ないことをやっていたり、見た目の馬鹿馬鹿しさとは別に、大枠の部分ではかなりしたたかに組み立てられた作品だと思いました。私個人はかなり楽しめましたが、この馬鹿馬鹿しさをどう感じるかによって好みがかなり分かれる作品のように思います。