ハイバイ「おねがい放課後」@こまばアゴラ劇場

(あらすじ)−ホームページより引用

1年に4歳、年をとってしまう奇病に悩む、見た目おっさんの大学生、

志賀君。

と、それを取り囲む家族や同級生達の絶妙な気の遣いようと、
大学での志賀君の活躍が、新しい顧問の先生のせいで
台無しになる様子を、自意識がバツグンに冴え渡る二十歳くらいの精神状態を下地に
その自意識をさらに助長させる恋愛、友情、苛立ちとナルシズムと性欲で味付け、
皆がドロドロと放課後におねがいしたものについて書き連ねます。

(感想)
3月にあったプレビュー公演を受けての本公演で、ますあらすじの設定も当初は4年だったのが計算が合わなくなるということで公演直前に3年に変更したという前説から舞台は始まります。
最初の仮タイトルが「志賀ちゃんフォーエバー」だったということからも分かるように、この作品は、まず青年団志賀廣太郎さんというベテランの素晴らしい俳優さんにズラをかぶせたり、見た目は実年令だけど、実際は20歳の役を大真面目に演じさせるということそのものが始めにありきの作品なのではないでしょうか。そんな何とも馬鹿馬鹿しくも大それた、けど「卑怯な飛び道具だ」と言いたくなるくらい面白いことを考え、それを本当に実行に移してしまった時点でこの公演の成否の半分は決まったも同然だと思います。プレビューでは若い役者さんが、髪の毛を剃ってマジックで顔にシワを書き込むというこの劇団の1つのウリともいえる力ワザが生み出す胡散臭さで笑いを取っていました。今回はそれを「ホンモノ」の志賀さんが演じることによって、志賀さんがなまじ上手い役者さんなだけに、20年の男の見苦しさみっともなさをかなりしっかりと演じていて、それが逆に嘘くささが生み出す笑いというものが減っってしまい、想像していたよりは笑える部分が少なくかったように見受けられます。ただ、プレビューと比較して志賀君を取り巻く人達の彼に対する描写がものすごく丁寧になったことにより、従来作品で腑に落ちなかった志賀君の病気のことや人物描写で納得して観ることのできる部分がかなり増えたように感じました。お母さんがお父さんに替わったことによって、志賀君のみっともなさをいい意味で増しています。
プレビューと比較して全体的に笑う部分が減ったように感じましたが、この作品は本来志賀君の外見のハンデキャップや20歳の男の恥ずかしい部分を茶化して笑うだけ(もちろん「笑い」という部分が作品の大きな一要素を構成するのは間違いありませんが)の作品ではないはずだと思っていたので、個人的にはこちらの作品の方が好感が持てました。
今回は、どうしても3月に観たプレビューとの違いを比較しながら観た面白さや、同じシーンを2回観たからこそ気付いた作品の良さがあったということは否めません。ただ、そういった部分を差し引いても彼等の「話す」ということや「演じる」ということへの深いこだわりと新しい側面が出た、キメの細かいとても良い作品だったと思います。

プレビュー公演の感想はこちらになります→ id:ike3:20070318