ヨーロッパ企画「苦悩のピラミッダー」@駅前劇場

(あらすじ)
紀元前2200年のエジプト。王宮のとある1室に集められた人々。宰相の話だと、王の命でピラミッドを作ることになり、ここにいるメンバーがそのプロジェクトチームのメンバーに選ばれたらしい。ただ、旱魃続きでここの所税収も今一つで、王の人気も今一つで、民のモチベーションもものすごく低いので、ピラミッドなんか作っている場合ではない。
ただ、王の命令は絶対。なかば、その場の勢いとノリで作業を始めるのだか、次々と問題が発生することに・・・。
(感想)
もともとの脚本が2000年に書かれたということもあって、どこか学生のサークルのノリを感じる(今でもそんな気がしますが・・・)作品です。ただ、そこで描かれているのは、みんなどこかおかしいと思いながらも、その場の空気に流されてそのひとことが言えずに取り返しのつかないことになったり、嫌なことは下へ下へと押し付ける、等といった、組織に生きる社会人ならだれもが身につまされた出来事の数々。組織の本音と建前が絶妙なさじ加減でコミカルに描かれている姿は、笑いを誘ってくれます。ドタバタさと緻密さとのバランスもちょうどいい塩梅ですが、バランスの良さが、所によっては中途半端な印象に感じてしまうという残念な部分も見受けられましたが、総じて良く出来た作品だと思います。
今回、駅前劇場での公演でしたけど、演出や演技の芸の細かさやこだわりを観るには丁度よい大きさだったのではないでしょうか。ヨーロッパ企画の作品は前回「ブルーバーズ・ブリーダーズ」に引き続いて2度目で、上田さんの脚本の作品は3本目で、イベントを含めると4度目なのですけど、彼等の作品で面白いと感じたのは総じて舞台から近い距離の時が多かったように感じます。芸の細かさが分かる時にはとても面白いのですけど、その細かさが伝わらないとやっていることのレベルの高さほど面白さが伝わらないのかなあという気がします。それを判断するほど作品を観てないので、あくまでも私見ですが・・・。
役者さんは、スズナリの公演とキャストを2分しているため、ここで、スズナリに出ている彼等が出てくれば、と感じた部分は否めませんが、その中でも宰相役の永野宗典さんが、配役の上でも演技の上でも他の役者さんを上手く引っ張っていってるという印象を受けました。それに上手く引っ張られて他の役者さんもなかなか頑張っているように感じられました。
今回は、バック・トゥ・2000シリーズということで2000年初演の作品を一挙に3本再演の中の最初の1本目ということで、3公演のチケットをすでに購入してしまった身としては、ここで万一つまらなかったら目も当てられないなと思っていたのですが、最初からこの出来でしたら、この後もとても楽しみです。