G-up presents「アリスの愛はどこにある」@新宿FACE

(あらすじ)
アリスの誕生日の日の夜、友人達が彼女のためにパーティーを開いてくれたが、肝心の絵本作家の彼が仕事が忙しくて顔を出す事が出来ないので、彼女はいつも以上に機嫌が悪い。
そんな時、出版社に勤めている彼女の姉が、彼から預かったプレゼントを持って部屋にやって来る。彼からのプレゼントは1冊の絵本だったのだが、アリスはそれを見ようともせずに地面に叩きつけて、ふてくされて眠ってしまう。
眠りについたアリスを起こす誰か。目を覚ますとそこにはウサギの着ぐるみを着た人間らしき物体が、彼女の目の前に。どうやら、彼女は彼の書いた絵本の世界に迷い込んでしまったようなのだった。
(感想)
現実の世界の少女が、絵本の世界を旅するファンタジックな作品。私の中では新宿FACEと言うとライブハウスやプロレス会場のイメージがあり、ここで演劇をやるという絵が中々イメージ出来なかったのですが、四方に客席、中央に舞台を配したゆったり目のステージでなかなかいい会場です。その会場の舞台だけでなく通路や出入り口もフル活用して作られたステージは、演出の巧みさもあって、絵本の世界の雰囲気が上手く出ていてました。ただし、天井を見てしまうと、やっぱりライブハウスなんだなあと一気に現実の世界に引き戻されてしまいましたが。
個人的には、この作品のようなメルヘンチックなベタ甘のラブストーリーというのは苦手なのですが、それでも楽しめたのは、豪華な役者さんたちの適材適所のキャスティングの妙があったのが大きかったです。中央に新谷真弓さん、楠見薫さんという華のある実力派を配し、その周りを瀧川英次さん、辰巳智秋さん、桑原裕子さんなどの小劇場のデキる役者さんが固める。それに、普通のイイ男なら嫌味なことこの上ないアリスに恋する女ったらしの役に、ものすごくイイ男の弓削智久さん。カッコいいというのはそれだけでも得だとつくづく思います。
彼等も含めて他の役者さん達はこれ位はできる人達だろうと思いますが、大変失礼ながら、予想以上の演技に驚いたのが、兄妹役の多根周作さんと、田中あつこさんのお二方。しゃべれないけど表情豊かな演技の多根さんと、無邪気な子供っぽさがとてもいい感じの田中さんの良さが、女王役の楠見さんと絡むシーンは作品の中でもとても印象深いシーンでした。
全体的にファンタジー色の強い作品で、最初はやや作品全体が間延びしている感がありましたが、愛情の裏側の現実社会の黒い部分―憎悪や、裏切りや、嫉妬や、すれ違い等の感情が渦巻き、いつの間にかナマナマしく、登場人物達に血が通った作品へと変わっていきます。それに伴って中盤以降は物語を加速されながら、話しがグッと締まった印象を受けました。
脚本やキャストを考えると、まだまだやれるのでは、という感があったのは否めませんが、役者さんの演技を観ているだけで楽しく、時間が経つのを忘れさせてくれる作品でした。