野鳩「君は人のために死ねるか」@駅前劇場

(あらすじ)
「死にたい」
高校生、トレゾーはふとしたことからそんなことを思った。
そんなことを思ったところで、それを止めてくれる友達もいないし、心配してくれる友人もいない。まして、片思いのあの娘は自分のことなんて・・・。
そう思って気にロープを吊るして、これからと思ったその時に・・・。
(感想)
常々からいつかは観てみたいと思っていた劇団の一つなのですが、コンスタントに公演を打っているのでそのうち観れるだろうと思っていたら、今回の公演が終ったら次回公演までしばらく間が空くとのこと。慌てて見に行く事に。
いろいろと噂には聞いていたのですが、アニメやドラマのキャラクターをそのまま拝借している部分があったり、題材にしても服装にしても高校生の学芸会そのままの気分です。ただ、学園祭のようだとはいってもそこはお金を取って観てもらっているだけのことはあり、演技も見た目以上にキチンとしていますし、他のメディアからネタを借りているとはいえ、脚本もきちんと組み立てられています。この土台はしっかりしてるけど、ほんわかとしてどうしようもなくユルいその世界は「野鳩ワールド」とも呼べる、他の劇団では真似のできない一種独特な世界と言えます。
そんな、確固たる世界を反映してか、思春期独特の過剰な自意識やこっぱずかしさを作品に落とし込む手際の良さはさすがで、骨組みの方はかなりしっかりした作品です。
ただ一方で、骨格はしっかりしているけど、作品の肉付けの方がやや不十分な印象で、観ていてやや物足りなさを感じました。1時間強という時間だったことを差し引いても、話しを膨らませるエピソードや仕掛けが最低でも、もう2〜3個位欲しいなと思いました。
今回の公演では、この劇団の確立された世界やスタイルは充分に堪能させてもらいましたが、その一方で正直ちょっとネタ切れだったのかなと勘繰ってしまいたくなるような出来だったのが残念でした。次回公演までしばらく間隔が空くそうなので、その間に文字通りしっかり充電して、もっとヴォリュームのある作品を見せて欲しいと思います。