「いとうせいこう×奥泉光 文芸漫談シーズン2」@北沢タウンホール

去年の11月に引き続いて文芸漫談に行って来ました。今回のテーマは世田谷スペシャルということで、世田谷にゆかりの深い作家、大岡昇平さんの「野火」を御題に1時間半。果たしてこの笑いとは全く対極にある作品で漫談が成立するのかと思っていたら、作品を大真面目に分析しながらもしっかりと笑わせてもらいました。
今回は、時間があったので作品も読めましたし、奥泉さんも作品を相当に読み込んで来たということもあり、かなり聞き応えがありました。「野火」の作品の構造が人間社会と死の世界とを繰り返し彷徨いながら、やがて人間の世界から動物の世界へと転落し、主人公がこの世の地獄を経験するという緻密に組み立てられた作品の構成を紐解いていく過程。それをのちに主人公が精神病院の中で回想しながら書くことにより、自分自身の文章に批評を加えていること。更には極限状況下ではこの作品のように自分の実体験に基づいているから=事実とは限らないということによって,書くという行為とは何か?と言ったこと。自分が全く気が付かなかった、そういった様々な作者のこの作品の中に込められた深い意図を知る事ができ、作品により近づくことができたように感じます。
プロフェッショナルの本気になった時の読み込みの深さには、笑いながらも凄みを感じました。全く比較にはなりませんけど、今までよりもうちょっとだけ深い読み方のできる読み手になりたいなと思いました。
いろいろと面白かったですけど、特に渡辺淳一の「愛の流刑地」ネタはツボでした。「渡辺淳一の愛の〜」の後にどんな無茶苦茶な言葉をくっ付けても、何となく渡辺淳一が書いているっぽく見えるし、読んでみたくなるっていうのには、大笑いさせもらいました。試しに帰りの電車の中でいろいろとくっつけてどんな小説か想像してみるという遊びをしていたのですけど、なかなか楽しめます。とってもヒマでやることがない人は是非お試しください。
次回は5月にガルシア・マルケスの「予告された殺人の記憶」とのこと。一度是非読んでみたい作品だったので、読んだ勢いで見に行きたいのですけど、平日なのでちょっと厳しい状況です。
http://www.k-kikaku1996.com/work/bunman/bunman-05.html