MONO「地獄でございます」@三鷹市芸術文化センター星のホール

(あらすじ)
健康ランドのサウナにしか見えない一室。そこに5人の男がすっぱだかの状態で次々と現われる。ただ、このサウナ、フロントの受付の態度から始まって、いろいろな部分がどうもおかしい。おまけに、不信に感じながらもいざサウナに入ろうとすると、暑くてとても入れたものではない。
苦情を言いにフロントに戻ってみると扉はピタリと閉められていて外に出ることも出来ずに閉じ込められてしまった。
途方にくれる5人。仕方なくサウナに戻ってみるとそこに1枚の張り紙が。

「ここは地獄でございます」

(感想)
ものものしいフライアーやタイトルとは相反して、清潔感のある明るい感じのする舞台作り。ここはどこ?と疑問に感じている登場人物達と同じ気持ちになり、始まりからいきなり舞台に引き込んでくれます。この辺の最初の掴みや、その後の展開の組立ての上手さは手馴れたのもを感じます。そしてその中でその場所の真相と、人間関係とが、次第に明らかになっていきます。本当なら人間関係や芝居のプロットが結構入り組んでいるはずなのに、そうとは感じさせない見易さを感じるのは、いろいろなものがきちんと整理されているからだと思います。特に、登場人物5人の関係を職場の同僚の3人と、彼等3人を1つの頂点にして残り2人をそれぞれの頂点とした、2つの三角関係で描かれていて、大きい3角形の方は、そのそれぞれが被害者でもあり加害者でもあるという三すくみの構造がとても面白いなあと思いました。そういう関係なので、それぞれが地獄に落ちたくないので上辺だけは仲良くしているのですが、所々で人間関係にボロがでてしまう姿はコミカルであると同時にとてもシニカルです。長年一緒にやっているだけあって、舞台の空気の作り方とか会話の呼吸などはぴったりで最後まで楽しめる作品でした。
すごく強烈なインパクトこそありませんけど、上質なエンターテイメントなだけでなく、自己愛や虚栄心といった人間の内にあるものを鋭くえぐっているよく出来た作品でした。最後、人間関係が崩壊していく醜いシーンをあえて描かなかったおかげで、コミカルさとシニカルさとのバランスの針がいい意味でコミカル寄りになったとは思いますが、この作品が本来持つはずだったねちっこさや人間のドロドロとした感情が伝わりにくいという部分があったのも事実で、それがほんのちょっとだけ物足りなさを感じてしまったように感じます。