PEOPLE PURPLE「ORANGE」@六行会ホール

(あらすじ)
神戸にある湊山消防署は、現場で救助を行う救助隊の他に、消火活動を行う消防隊、被災者の救護を行う救護隊から成り、人々の命を救うために、日夜奮闘している。
消防署の花形の救助隊の証であるオレンジの服を着るために訓練に励む、若手の消防士、先輩に追いつこうとがんばる新人に、青森からやって来たかなり変わった研修生など、職場には真剣さの中にも活気に溢れている。
そんな、彼等若手を見守る中堅・ベテラン職員達には、ある共通した苦い記憶があった。それは、10年前の冬に起こった大震災での出来事。
あまりにも自分達の力を超えたできごとに救いたいと思っていた命を救うことができずに無力さを思い知らされた日々。そんな思いを二度としないためにも彼等は戦い続け、伝え続ける。
(感想)
全部で2時間40分の二部構成の作品。観ている途中は若干長いかなとも思ったのですけど、思い返してみるとストーリー上無駄なシーンはほとんどなく良く出来た作品だったと思います。関西大地震の事件を扱ったストーリーと聞いていたのでそれを全編押し出してくるのかと思ったら、第一部の後半部分の約4分の1が震災について扱ったシーンになります。そのことが逆に震災について軽々しく扱わないということ、そういった重いテーマを扱いながらエンターテイメント作品として楽しめるものを作ろうという劇団の決意のようなものを感じます。震災のシーンや、災害救助のシーンなどもフィクションながらもかなり入念な取材の上に成り立っていることが分かります。
最初の内は会場のためなのか、マスクをつけたままでの演技のためか声の通りが悪くて聞き取りにくい部分はあって、芝居にスムーズに入り込めない部分があってちょっと残念でした。関西の劇団が、関東で公演を行う時の会場選びの難しさを感じました。
その後、署員たちの訓練や救助活動などのシーンを入れながら、部隊はやがて前半のクライマックスの大震災の回想シーンへと入っていきます。さまざまなシーンを目まぐるしく切り替えながらみせていく演出は、スピード感と上演時間以上のヴォリューム感とを作品に与えてくれます。スピードに振り回されてしまいやや粗っぽくなってしまう部分もありますけど、そういった短所を差し引いて余りある力強さと説得力とが作品の中に感じられます。
第2部は、1部の回想シーン以降の彼等の活躍を描いた作品で、テンポの良さは相変わらず素晴らしいものがあります。後半部分で筋が見えてしまった部分がありましたけど、分かっていながらも見せてしまう力はあります。この辺は劇団のストレートな部分がいい方向と悪い方向の両方に出たように感じます。
彼等の作品をここ1年で3作観ましたけど、演技や細かな部分では粗っぽさ感じる部分はありますけど、どの作品もレベルの高い楽しめるものだったように感じます。今後もコンスタントに東京でも活動していって欲しい劇団です。