渡辺源四郎商店「素振り」@王子小劇場

三本のオムニバス風の話しが交互に展開される作品。3つのストーリーをものすごく大雑把に説明すると下の通りになります。
1)野球の素振りをする男とマネージャーらしき女が登場する。合宿で作るカレーの話しなどしているので、高校の部活の話しかと思わせておいて実は・・・。
2)竹刀で素振りをする男2人に女2人。女はそれぞれが姉妹で、その妹と結婚している夫と彼女達の弟が男性陣に当たる。姉と妹とはとことん仲が悪く、姉は妹のものを見ると何でも横から欲しがるクセがある。そんな2人に男性2人はなすすべもない。ケーキで言い争っているだけでは飽き足らず、姉が妹の夫にまで手を出そうとしたので話しはややこしいことに。
3)2人組の女性が登場して繰り広げられるコントのようなお芝居。訳も分からずにテロの犯人扱いされ拉致されたり、実はそれが部屋に引きこもった少年の妄想だったり、そんな彼等を皆で説得したりするお話し。

3本のオム二バスのうち、1)と2)はタイトルの「素振り」に関連してひたすら素振りをしながらストーリーが進んでいくお芝居で、3)だけタイトルとは全く関連のない作品です。ただひたすら素振りをしているだけで「どうなるのだろう」と不安と期待が半々で観ていたのですけど、とうとう最後まで素振りをしながら2本のやり切ってしまいます。アイディアはとっても面白いと思いましたし、安易なワンアイディア勝負にせずに、それで1つの筋立てのある作品として成立させてしまった力量というのは大したものです。特に1)は途中から数えるのをやめてしまいましたけど、200本以上フルスイングで素振りをしながらの演技を×2公演。好きでやっているとはいえ本当にご苦労さまですと心から言いたくなりました。いろいろな意味で良く鍛えられた役者さん達だと思います。体力だけでなく、演技のほうも淡々とした中で、それぞれの役者さんがいい味を出していたように思います。
本来なら1本、1本短編集の形で上演すればいいはずの作品を細切れの形でやったのは体力的な問題があったのではないかと思われます。その辺は何となく理解はできるのですけど、それでもこういった形で公演をする以上は3つのオムニバス作品を1つに収斂される仕掛けが欲しかったように感じました。個々の作品としては面白かったのですけど、これですと1)、2)を作ったけど、時間が余ったので3)をくっつけてみました感が否めませんでした。
周囲の評判から、自分の中では正直もっとがっしりしたしたストーリーのある骨っぽい作品を期待して観に行ったので、その点ではやや肩透かしを食らった作品でしたが、私の期待とは別の意味で、なかなか面白い趣向に富んだ作品だったように感じます。