劇団鹿殺しオルタナティブズ「山犬」@ザムザ阿佐谷

(あらすじ)
同窓会で久しぶりに再会した男女3人。3人の所にはある男から一通の手紙が届いていた。その、手紙には10年前に埋めたタイムカプセルの事が書かれていた。その手紙をきっかけにそのことを思い出した3人はタイムカプセルを掘り起こそうと、それを埋めた小学校に向かい、掘り起こす3人。
そのタイムカプセルの中には、3人が埋めた宝物と一緒に、こなごなになった骨が入っていた。埋めたはずのない、こんなものが何故中に入っているのか分からず戸惑う3人。そういえば、手紙の送り主の名前にも記憶がない。一体、誰がこんなことを…。
その理由を探そうと10年前の記憶を遡る3人。ただ、その前に事態は取り返しのつかない方向へと進んでいくのだった。
(感想)
前回の4月に行った時には、所々に観ていられない位の危なっかしさや上滑りしている部分を感じながらも、その独特でパワフルなステージと強烈な個性を持った役者さんたちの魅力にはひき付けられ、なぜか気になってしまった劇団鹿殺し。今回は、演出を替え客演の役者さんを入れ「オルタナティブズ」と謳った公演になります。前回の公演としか比較はできませんが、今回の公演では、パフォーマンスの部分を抑え目で、プロットを見せる方に力点を置いたホラーチック(?)な作品になっています。
基本的なストーリーは同窓会のシーンと10年前の彼等の回想シーンとが交互に演じられ、それの合間にはさまるように山本聡司さん演じる謎の男が舞うシーンが入る組立てになっています。
今回は控えめながらも、随所に見せ場はあり、パフォーマンス集団としてはやっぱりレベルが高いですし、存在感があります。特に、謎の男を演じた山本さんのパフォーマンスが凄かった…。身体能力の高さを生かした動きももちろんですけど、それだけでなく、どこか怪しくて惨めなオーラが漂っていながらもすごい迫力で、それが今回の舞台の雰囲気に見事にはまっていました。
プロットもそれなりに面白かったですし、パフォーマンスそのものはとっても面白かったのですけど、今回も上演時間を通して面白かったかというと、その辺については少し疑問を感じました。仮にプロットを見せることに徹するのであれば、途中で話の結末が何となく連想できてしまう展開には問題があるかなと思いましたし、現在と過去とが1つに収斂されていくシーンまでの間にもうひとヒネリ欲しかったように感じます。更に、場面と場面との間を効果音でつないでいく、コントや映画のような演出を多用していたのですけど、プロットが作り出したショッキングな雰囲気や、それによって生まれた緊迫した流れを、壊してしまっている場面があったことも、舞台を観ていて少し中途半端な印象を受けた理由だったと思います。本当に凄いなと感じる部分は多々あるのですけど、劇団の公演として見た場合、2時間なら2時間の公演時間があったならば、それをフルに使い切る工夫が欲しいと思いました。
後半は、やや辛目の感想になってしまいましたけど、基本的にはこの劇団の役者さんって好きなんで、文句を言いながらも、結局は次回公演も行ってしまうんだろうなと思いますし、行ったら行っただけの見せ場は必ず作ってはくれます。ただ、自分の好みとしては、マニアック過ぎる笑いの部分についてだけは、もう少し何とかならんのかとも思います。