モダンスイマーズ「赤木五兄弟」@THEATER/TOPS

(あらすじ)
赤木家は男ばかり5人兄弟で、彼等は一つ屋根の下住んでいる。乱暴で直情的だが腕の立つ大工だった父親の影響を強く受けて育った彼等は、中学を卒業したら全員が大工の道に進み、気が荒くて、兄弟は下の者が上の者に絶対服従年功序列という今時の時代には考えられない家庭。そんな彼等のことを、近所の人間は異常扱いし避けられていた。
そんな変わり者ながらも強い絆を持つ兄弟の身の上に大きな変化が訪れる。それは、両親が事故で亡くなってしばらく経ったある日の、末っ子の言葉がきっかけだったのだった。
(感想)
どこか懐かしい感じのする家屋のセットと公演のちらしの写真から、のどかな感じの芝居かと勝手に想像していたのですけど、いきなりガラの悪い兄弟が何人も出てきて、自分の抱いていたイメージとのギャップに驚いてしまいました。
物語に登場する家庭はいわゆる今時の家庭とは大きくかけ離れていますが、物語が進むに従ってそんな彼等に感情移入してしまいました。それは彼等兄弟は決して器用ではありませんし、ものごとをすぐ力ずくで解決してしようとしてしまうのですけど、彼等の生き方が上っ面ではなく、本音で家族を取り巻く問題に文字通り体当たりでぶつかっているからでしょう。こういう題材を取り上げると、安易に湿っぽくしたり、安っぽいホームドラマにしてしまう危険性が大いにあるのですけど、カラッとした笑いのある骨太な劇に仕立て上げるあたりは、脚本を担当した蓬莱竜太さんのセンスの良さというのを本当に感じてしまいます。
この舞台に登場した兄弟が生き生きと感じたのは脚本の上手さの他に、リアリティを重視した演出や小道具の使いかたも大きかったと思います。兄弟達が草むしりをする時には実際に本当の草をむしっているようでしたし、顔を洗うために水道の蛇口ををひねると本当に水が出てきますし、材木をカンナで削るとかんなくずが出てくる。こういう何気ないけど丁寧で細かい部分の積み重ねが、ちょっと現実離れした兄弟のリアルな日常を実に上手く描きだしていてとても面白かったです。
兄弟のそれぞれの色分けも上手くできていましたし、役者さん達もしっかり演じきっていましたし、1時間20分位の公演時間だったのでしたけど、あっという間に感じました。ただ、「さあ、これからいい所になるぞ」と思っていたところで唐突に終わってしまったので、観終わった後に一抹の物足りなさと、肩透かしを食らった感じがしたのは否めませんでした。当日会場で配布された公演の案内によると、今回の赤木五兄弟のシリーズ化の方を企てているとのこと。フラストレーションが残った部分は続編で解消するということでしょうか?そうだとすると物足りないので続きが観たいと感じた私は、彼等の計算にまんまとはまったことになります。