親族代表 THE LIVE「忄(りっしんべん)」@THEATER/TOPS

プラン9とどっちに行こうか悩んだのですけど、こちらの方が面白そうだったので行ってみました。始めてだったので、最初のうちは会場の空気についていけるか不安だったのですけど、開演前に過去のコントが上映されていて、そのおかげで取り残される事なく楽しむ事ができました。コントによって脚本家が違ったせいか、作品の出来にややばらつきがあった気はしましたし、それをまとめるために幕間の演出を統一したためにかえってリズムが単調になってしまった部分はありましたけど、全体的にはとても上質なステージで面白かったです。
出来にバラつきがあるとは言っても、考えてみたらこれだけ豪華ながらもカラーの違う脚本を演じ分けれるというだけでも凄いことですし、コントの順番の配置も良く考えられていて、後になるに従って面白くなっていったように感じます。個人的には、演出も担当した福原充則さんの作品と、最後のネタが特に面白かったです。
(すごくおおざっぱな筋と感想)
1.「影響を受けた人と、その友人と、その友人」(脚本)小林賢太郎
友人に連れられた一人の男がファミレスにやって来た。そこには1人の怪しい男が…。彼は、悪の秘密結社を作るために人を集めているのだという。その男は、やってきた男に秘密結社の心得を説く。
「まず、メモはとらない!」
・どの脚本を誰が担当しているのか、終演になるまで発表されなかったのですけど、「何か小林さんぽいよなあ」って思っていたら、やっぱりそうでした。(多分、そう思いながら見ていた方は、結構多いのではないでしょうか)コミュニケーションがずれていき会話がちっとも前に進んでいかないだけでなく、それが変な方向にずれていくサマがコミカルに描かれています。こういう会話劇って、一歩間違えるとただの言葉遊びになってしまう危険性があるのですけど、そうならないあたりが、小林さんの脚本の面白さであり、それをきちんと処理した彼等3人の力量なんだろうと思います。ただ、流石だなあと思いながらも、ちょっとくどいなあとも個人的には思いました。
2.「男心」(脚本)本田誠
幹事不在のまま、合コンに突入することになってしまった3人の男。おかげで、テンションがいま一つ上がらない。来なければよかったとボヤき、さっさと切り上げて二次会で盛り上がろうと誓う3人。しかし、口ではそんなことを言いながらも、コンパが盛り上がって来るに従って、一人また1人と抜け駆けを……。
・男の友情のモロさと、女を前にした時のミエの張り合い、そして自爆と、男の愚かさが上手く描かれている作品。パターンとしてはお約束のコントなのですけど、前半の彼等の盛り上がりと、ラストのテンションの低い気まずい雰囲気とのギャップが面白かったです。
3.「情熱の男たち」(脚本)嶋村太一
2人の男が話しをしていると、彼等の話の邪魔をするように現われた一人の男。どうみても、情熱大陸のテーマを演奏している「あの」バイオリニストのバッタものにしか思えない。その男がバイオリンケースからおもむろに取り出したものとは……。
・これは、ニセ葉加瀬演じる竹井亮介さんのキャラの面白さに尽きるでしょう。「訳わかんねえよ」とツッコミながらも笑ってしまいました。
4.「泥人形」(脚本)千葉雅子→5.「チキンブルース」(作詞・作曲)嶋村太一
場末の食堂で、ビールを飲みながら、向かい合って座る2人。2人ともお互いに言いたいことがあるようなのだけど、なかなか切り出せずにいる。果たして、彼等は相手に言いたい事を伝えられるのだろうか。そして、言いたい事とは、何なのだろうか?
・ここまで、比較的、きっちりとした感じのコントが多かった中、前半がややグダグダ気味だったので、大丈夫かなあと思っていたら、最後の最後で大爆笑のドンデン返しが。コントの後に続く、チキンブルースとセットで楽しめる作品でした。
6.「天文クラブ」(脚本)福原充則
天文クラブのダメ部員2人に、ダメ顧問。文化祭の発表を目前に、彼等が使うハズだった視聴覚室はサッカー部に横取りされたこともあり、2人の部員はどうせ俺達なんてとかなりいじけ気味。
そんなダメな3人がくりひろげる、馬鹿馬鹿しくてちょっとホロって来る話。
・個人的には、今回のライブで一番好きな作品です。脚本と演出を福原さんが一緒に担当しているので、本の面白さが、良く引き出せていたように感じました。ダメ部員2人の他人に対する劣等感と、お互いに対する歪んだ優越感とのさじ加減の絶妙さが、彼等のダメ加減っぷりに拍車をかけつつ、屈折した心理というのを実に上手く描いていると思いました。笑えるだけでなく、青春時代のほろ苦さと理不尽さというものも描かれていて、そういう意味でも面白い作品でした。
7.「野間口徹と・・・」(脚本)ブルースカイ
「親族代表の今後に関わる大事な話しがあるんだ」と野間口に呼び出された、嶋村と竹井。集った2人に、野間口がぼそっと話しを切り出す。
「実は、親族代表というグループの名前についてだけど……」
・親族代表3人の、日常での力関係を連想させてしまう、内輪でやっている強みをフルに生かした、ある意味卑怯な笑い満載の爆笑コント。タイトルの通り基本的な主役は野間口さんなのですけど、実は一番美味しいのは、虐げられまくっている竹井さんじゃないかと思いました。笑えるだけでなく、ライブそのものをキレイにまとめたラストはお見事でした。