こどもの城+ネルケプランニングプロデュース「南国プールの暑い砂」@青山円形劇場

(あらすじ)
小学校の移動教室以来、15年ぶりに南の島のリゾートホテルで再会した同級生たち。久しぶりに再会した懐かしさから、亡くなった当時の担任の先生のことや、昔の事を語り合う。そうしているうちに彼等は、忘れかけていたさまざまなことを思い出し、やがて当時に関わる小さな謎に突き当たる。そして、その謎が、昔リゾートホテルで起こったあるひとつの事件とつながっていくのだった……。
(感想)
今回の公演は、去年の5月、劇団KAKUTAが上演した公演をキャストを一新して再演したものだそうです。私は、初見でしたので最初の公演の模様というのは全く分からないのですけど、今回の公演については、この時期に、この会場で、前回と同じ桑原裕子さんが演出を担当したということが、もの凄くプラスに作用したように感じます。
普通は、開演前というのは少し手持ちぶたさになってしまうのですけど、南国のリゾートホテルを連想させる清涼感のあるセットと、海やカモメの効果音や、そこに流れるBGM。そして、そこに最初から存在していたかのようにさりげなく振舞う役者さんたち。今回は、この心地よい空間を作られた段階で、開演前から半分「やられたなあ」って思いました。キレイ所の役者さんの水着姿が見れたということも、今年海に行けない私にとってはとてもいい眼の保養になりましたし……。もの凄く当たり前のことなのですけど、舞台って上演する時間や、場所によって作品のイメージが随分変わってきますけど、今回はそのことをとても強く感じました。
ストーリーが南の島のリゾート地で繰り広げられる同窓会という題材は、一歩間違えるともの凄くチープな恋愛ドラマや友情ごっこを見せられるという危険性があるのですけど、青山円形劇場というほぼ円形の特殊な空間をフルに生かした立体的な舞台の使い方と、複数のストーリーが平行して動いていく緻密な作品作りによって、そういった印象はほとんどありませんでした。ただ、舞台をフルに使っているシーンが多いために、逆に場面のどこを観ていいのか分からなくなってしまったり、やや観難いと感じるアングルが所によってあったのが少しだけ残念でした。
空間の作りかたと同じくらい上手いなあと思ったのが、小学校のころから15年ぶりという絶妙な時間と人との距離感の作りかたです。本人の代わりに来た替え玉の人間や、気まずさから転校して間もない人間の名を騙ることになってしまった一緒にきた友人のことに気が付かなかったり、かと思うと、すごくくだらないことで本人さえ忘れていたようなことを相手が鮮明に覚えていたり、些細なことが15年間ずっとトラウマになっていたり……。
どこか懐かしい気持ちになったり、ちょっと昔の古傷にうずくようなホロにがさを感じたり、心の琴線に触れるものがあったのは、自分も昔のことを振りかえって懐かしいと感じてしまう年になってしまったからであると同時に、この作品に込められた桑原さんの優しい視線を感じたからでしょうか。