代田' N PLANETS「恋するクランケに包帯とキスを」@駅前劇場

かなり遅くなってしまいましたが、日曜日に行った舞台の感想になります。
(ストーリー)
病院の整形外科の病室の一室。そこに入院する4人の患者が入院生活の退屈さを持て余しながらいつも通りに馬鹿話をしていると、そこに1人の見舞い客がやって来た。
彼は広告会社の営業マンで、4人がこの病院に入院する原因になった自動車の玉突き事故の「加害者」だった。
入院生活ももう随分経ち、そのせいかお見舞いの果物も最初のメロンからいつの間にかバナナへと変わっていく事を始めとし、被害者に対する誠意の気持ちが薄れてきたのではないかという疑いを抱く4人。
「じゃあ、誠意の気持ちに退院したら合コンをセッティングさせていただきましょうか?」
「退院したらなんて言わずに、今すぐに……。」
けど、その結果は、大惨敗。
そんな、彼等にリベンジの日は訪れるのか?病室を舞台に繰り広げられる、合コンに命を掛けた男達の馬鹿馬鹿しくも熱い戦いを描いたコメディ。
(感想)
この作品だけではなく、シチュエーションコメディ一般に言える事だと思うのですけど、結局の所、与えられた場をどう受け入れるかによって、面白さの温度差というのが変わってくる作品なんだろうなあ、と思いました。
ものすごく瑣末で、ストーリーの面白さとはとは全く関係ないのですけど、病院では2日に一度玉子豆腐が出るわけないとか、万一出るとしても事前に献立で分かるはずだし、看護の都合上面会謝絶の場合等のケースを除いて病室のドアは開けっ放しになっているし、それに第一合コンの時の会話だって一見もっともそうに見えてどう考えてもありえないだろうetc…。とシチュエーションのあちこちにツッコミを入れている自分がいて、最初の方は、周囲のお客さんが受けているほどは面白いとは感じませんでした。
最初の方は、笑いもぬるめで、自分自身は「クスッ」と程度に笑わせるんだろうと思っていたところで、会場が大ウケしているのには、もの凄く取り残されたような気分になりました。上田誠さんの書く脚本ってこういううそ臭くてユルい場面設定と、それをいい意味で裏切る、セリフ一つ、小道具一個にまで張り巡らされた緻密な伏線がウリなんだということはなんとなくは分かっているつもりでしたし、これはこれで面白かったことは面白かったのですけど……。
ですから、個人的には、合コンに失敗してから、彼等がリベンジへと向かう中盤以降のように、とことんまでシチュエーションにリアリティがなくなって馬鹿馬鹿しくなってからの方が物語としては楽しく観れました。ですから人によっては逆に後半の方に、「突飛すぎる」とか「やりすぎだ」と感じて違和感を覚える方もいたのではないでしょうか。そういう点では、合コンに失敗するところを境目に、作品のトーンが微妙に違っていて、その点をどう受け取るかで、この作品に対する評価も変わってくるのではないでしょうか?
シチュエーションだけでなく演出にも細かい瑕があるように感じましたけど、それでも面白く観させてもらったのは、緻密に描かれた脚本のおかげであると同時に、原田泰造さんを始めとした5人の男優さんの力が大きかったと思います。泰造さんは普段のコントを見ているような感じで、そんなに舞台向きの演技をしているようには感じませんでしたけど、それでも、一瞬で劇場の空気を掴んで場を盛り上げてしまうあたりは流石です。脇を固める俳優さんも華やかさこそありませんけど、個性的な曲者ぞろいで、なかなかいいキャスティングだったように思います。
途中、幕が降りて、映像が流れるシーンが舞台のポイントポイントで使われていましたけど、TVのバラエティ番組を彷彿とさせる作りで、とてもユニークで面白かったです。ただ、ところところ観にくい場面や、テンポが悪くなったりと、こなれていないと感じたの部分があったのが残念でした。洗練されてくるとこの劇団の「売り」になりそうな演出なので、(もし次があったらですけど)ぜひ続けて欲しいです。
メンバーの割りに会場が小さかったり、途中まで公演情報の詳細が全くといっていいほど分からなかったので、「ただの片手間にならなきゃいいけど」と少しだけ心配だったのですけど、私の想像していた以上に脚本も演技もしっかりしていて、真剣に芝居に取り組んでいました。
そうなってくると逆に、もし次回があったらこんな手ごろな会場で観れないだろうし、楽にチケットも取れないだろうなあって、今から心配になってきます。

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