劇団ハコビヤ「ボトルシップ」@サンモールスタジオ

新宿方面に行く用事があったので、サンモールスタジオまで少し足を伸ばして劇団ハコビヤの公演を観に行ってきました。当日券でも結構あっさり座れるかと思ったんですけど、受付の方と話をしていたら、29日と30日は前売りがかなり売れ行きがいいということ。なんとかチケットが取る事が出来てホッとしました。考えてみたら、先日行った鹿殺しの公演をやっていたタイニーアリスとは結構目と鼻の先だったんですねえ。全く違う行き方をしたんで気が付きませんでした。

(ストーリー)
ある島に漂着した1人の青年。彼は、自分が何者でどこから来たのかという過去の一切の記憶失ってしまっていた。青年は、漂着した所を島に住んでいる住民達に助けられる。
彼を助けてくれた島の住民の中で、彼と同世代の1人の青年がいた。島の青年は生まれてからずっと、島以外の世界が存在しないと大人たちから教えられてきた。そんな大人達の言葉に疑問を感じていた島の青年は外の世界を探すために海にでようとしていた。
「船を作って、お前のいた世界を一緒に探そう」
記憶喪失の青年に島の青年がそう語りかけた。
記憶喪失の青年がその島に来た理由。それは、この島の謎だけでなく、彼等の住む世界そのものに関わる重大なモノだったのだった。

(感想)
キャラメルボックスの左東広之さんが出ているということもあって観に行ったのですけど、お芝居のストーリーの組み立て方や、俳優さん一人一人の演技も基本がしっかりしていて安心して観ることができました。左東さんは大きな会場での演技が多いせいか、これくらいの会場になってしまうと少し演技が大きいなあっていう気はしましたけど、やっぱり上手かったです。
まず、公演の中で印象に残ったのは、舞台の右肩にあった大きなデジタル時計と、ボトルシップを大きくしたような組み立て式の船の二つのセットです。この二つのセット以外はそれほど大きなセットはほとんど使っていないのですけど、この二つのセットが物語のイメージを膨らませ、ストーリーをスムーズに進行させていくうえでとても効果的です。
ただ、一方でこの二つのセットによってストーリーの幅が狭くなったり、物語の展開が読みやすくなってしまった部分もあり、両刃の剣だったような気もします。
冒頭のシーンはややタメが長すぎてお芝居にすっと入りこんでいきにくいとは思いましたけど、記憶喪失の男と島の住民達との交流や、記憶を失ってしまった謎に迫っていくストーリーは丁寧で組み立てもしっかりしていて好感が持てました。
全体的によくまとまっていて観ていて退屈するということは全くなかったんですけど、ただ何かまんべんなく平均点よりやや上でそつがなさ過ぎるといった感じで、個人的にはもう一つびっくりしたり新鮮に感じる部分があったら良かったのに、と思いました。左東さんが出演されていたり劇団の方がもともと成井豊さんの教室の出身ということもあって、どうしてもキャラメルボックスと比較してしまうのですけど、何かその枠からはみ出した「この劇団でないと観られない」といったモノが欲しかったと思います。やや、厳し目の感想を書いてしまいましたけど、オーソドックスでしっかりしたお芝居が好きな方だったらかなり面白いと思います。