立花隆さんの講演会に行く

東京堂書店で行われた立花隆さんの講演会に行ってきました。講演会やトークショーに行く時には、話しをする人への最低限の礼儀として、その人の著書を読んでから行くのですが、今回は翌日もトークショーに行く事になっていたり忙しくて時間がなくて読まないで講演会にいったため、おかげで手ひどい失敗をしてしまいました。と、言うのも今回の講演会の内容が、先日刊行された「天皇と東大」で使用した資料の説明と、その資料を使用した背景や内容に関する説明に沿って行われたからです。そのため、本を読んでいないと公演の内容を理解するのが少し難しかったです。
講演会の冒頭から次から次へと資料の紹介があったのですけど、そこで使われている資料の広範さとそれを見つけ出すアンテナの広さや知識の深さにはただただ舌を巻きました。資料の取り扱いがやや乱暴で「この程度の裏の取り方で本の資料として使ってしまって、後で批判されないだろうか」と心配になってしまう所がありましたけど、資料そのものの細部までの読み込みの丁寧さには「ここまで細かい所にこだわるのか」と呆れながらも、すごいなあって思いました。
内容の方は、昭和初期の血盟団事件、5・15事件と東大生との関わりから始まって、学内の右翼と左翼の対立について、滝川事件の真相などについてかなり突っ込んだ話しがありました。大学で日本史を専攻していた私で理解できたのが7〜8割くらいでしたので、私の他にもつらかった方が結構多かったのではなかったのでしょうか。やっぱり本を読んでいけばよかったという後悔が、ここでまたふたたび頭をよぎりました。
当初は2時間の予定が2時間半になったのですけど、それは立花さんの講演が盛り上がったということもあるのでしょうけど、それ以上に細部にこだわりすぎて話しがなかなか前に進まなかったということも大きかったと思います。作家さんの講演会を聞いているというよりも、何だか大学で講義を受けているという感じの講演でした。細部へのこだわりはものすごく良く伝わったのですけど、そのこだわりを全体としての話しの流れや分かりやすさにもう少し向けてくれるとありがたかったんだけどなあって思いました。
講演会としては正直どうかなあ、という部分はありましたけど、資料を一点ごとに細かく説明していただいたおかげで、立花さんが作品を執筆するうえでどうやって資料を集めてそれを読み込んでいき、それを思考としてまとめ作品にしていくのか、そのプロセスの一端が分かり、そういった点ではとても貴重な経験でした。