沢木耕太郎「ぺーパーライオン―路上の視野<2>」

シリーズ2巻目にあたる本作は「作家」と「書物」というテーマで70年代後半から80年代前半に渡って書かれた作家論と書評が収録されています。この作品を読んでいると、沢木さんの興味の対象の広さと、「どんなものでも吸収してやろう」という知識に対する貪欲さを感じる事ができます。前作では、ノンフィクション作家としての作家作法についてのエッセイが多かったのですけど、本作ではその作法の土台になったものが何であったのかを垣間見る事ができます。
「ペーパーライオン」と名づけられ書評は、雑誌に連載になった作品がベースになったこともあって、書かれているリズムも文章の長さも同じなため、一気に本数を読んでいると若干つらさを感じる部分かありましたけど、一本一本はよく出来ています。適度な短さの文章の中に作者が引っかかった部分を絞りこみ、そこを一点集中で突破していく、そんなスタイルで書かれた文章には力強さといさぎよい心地よさというのを感じました。洞察力の深さや、切り口の鋭さでは、到底及ぶべくもありませんけど、この取り掛かりの見つけたらそこを足がかりにして突き抜けていく。そんな軸がしっかりした力強さと鋭敏さをもった文章がいつかは書けるようになりたい、そう思ってしまいます。
実は、一旦中断していた日記を再開する時に、本の感想文の文体やスタイルを少し変えたのですけど、その原因のひとつになったのがこの作品を読んだことです。
ISBN:4167209063:DETAIL