宮沢賢治「新編 風の又三郎」

実は瀬名秀明さんの本と並行して読んでいたので、読んでいる途中にものすごく不自然な気分になるのかと思っていました。けど、自分でも予想外だったのですけど、意外と不自然さがなかったです。賢治の作品というのは一言で語りつくせない多様な顔を持ち、そのために読む側に実に多くの受け取り方を可能にしていきますけど、瀬名さんのようなSF的な要素も実は作品のなかに結構含まれているんだな、と思いました。例えば、彼の年譜をたどっていきますと鉱物採集にひとかたならぬ興味を抱いていたようですし、そのことが彼のいくつかの作品の上で反映されています。その他にも、天文学、化学、生き物や植物に関する専門知識が作品のアイディになっていたり、重要なキーになっているものが見受けられます。
ところで、本作に収録されている表題作の「風の又三郎」なのですけど、童話や映像などで見ていると結構分かりやすい作品なのかな、というイメージがあったのですけど、いろいろな読み方が可能な作品で、結構難解な作品だと思いました。この奥深さというのが、賢治の作品の文章が平易ながらも、作品のイメージを頭に描く時に自分が想像していた以上に苦労していた大きな理由だったのかもしれません。
ISBN:4101092044:DETAIL