宮沢賢治「注文の多い料理店」

先日読んだ「銀河鉄道の夜」に収録されていた作品と比較すると、岩手県の自然や生き物や暮らしている人々の姿がいきいきと描かれている作品が多かったのですが、逆にそのせいで、自分の今住んでいる場所とのギャップにと迷ってしまい、作品の情景を上手くイメージしにくかったのかもしれません。賢治の描く世界というのは、美しく理想的で幻想的な側面というのは確かにあるかもしれませんけど、一方では、濃密な死のにおいや、どこかもの悲しい部分というのもあります。それは、多分彼がひたむきに生きながらも、現実のどうしようもなくやりきれない部分に嫌というほど直面してしまい、物語の世界に彼なりの楽土を求めなければならなかったからなのではないでしょうか。
ISBN:4101092060:DETAIL