土屋賢二「ツチヤ教授の哲学講義」

昔は、自分の人生をあまり深く考えずに生きていたせいもあり、哲学に全く興味がなかったのですが、ある時、自分の存在や自分を取り巻く周囲のものに疑問を感じてしまい、何か指針になるようなものが欲しい、と思った時期があります。けど、宗教のように神様に答えを教えてもらうのも何か納得できない、そう思って一時期、哲学の入門書に興味を持った時期があります。けど、哀しいかな、下地が全くないために開いたのはいいけど、何が書いているのか入門書なのによくわからない。そのため、何冊か入門書を読んだだけで挫折してしまし、今に至っています。
そんな、哲学からおちこぼれてしまった私がこの本を手に取った理由。それは、私が作者の書いたユーモアエッセイが好きで、「どうせまたワンパターンなんだろう」と思いつつも読んで笑っている、というファンだからです。読んでみて、後半部は正直ちょっと難しいなあ、って思いました。けど一方で、いままで入門書を読んでいてわからなかった部分や、難解だと感じていた部分というのが、実は言葉の使い方やその誤読だということで説明できるという考え方は、随分と明快でわかり易かったです。知識不足で比較対象に乏しいので、作者の考え方が正しいということをきちんと吟味できませんけど、少なくても私にとっては今まで読んだ哲学の入門書よりはすっきりして、論旨も明確でした。内容がわかり易かったのは、作者が筋道だった説明をしているのも、もちろんですが、そのほかにも説明を補強する具体例の面白さと説得力の強さによるところも大きいです。エッセイを読んでいるとついつい忘れがちになりますけど、この一冊のおかげで、そういえば土屋さんってタイトルの通り大学教授(それも一流大学)だったんだ、ということに遅まきながら気が付くことができました。
ISBN:4000013998:DETAIL