成井豊「銀河旋律、広くてすてきな宇宙じゃないか」

若干、今回のキャラメルボックスの公演のネタバレになりますので、公演を見ていない方は特に、「広くて〜」のパートは読まれない方がいいと思います。
(銀河旋律)
タイムトラベラーが一般化した時代。タイムトラベルが引き起こしたニュースを読んでいたキャスターの柿本が軽いめまいに襲われ、彼の時間が改変される。彼の時間が改変されたのは三回目で、いずれも柿本と恋人・はるかとの仲を裂こうとする、はるかの元同僚・サルマルが関係しているのだった。そして、四度目の改変で、柿本は同僚のキャスターのヨシノと婚約を発表、そして、はるかとサルマルは婚約。ついに、サルマルの企ては成功するのだった。その事実に納得ができない柿本は、全財産を処分し、過去に遡るのだった。はるかと出会い、自分の気持ちを伝えるために。
(広くてすてきな宇宙じゃないか)
ニュースキャスターの柿本は、妻のはるかをなくした後、三人の子供を育ててきた。はるかが亡くなって、すっかり冬のようになってしまった家庭。そんな中、家庭にアンドロイドのおばあちゃんを貸し出す、FRS(ファミリーレンタルサービス)が厚生省の外郭団体で開始される。子供達のことを思いながらも、相談なく借りてしまった柿本に、子供達は猛反発。特に、末っ子で次女のクリコはおばあちゃんとは口も聞こうとしなかった。
「おばあちゃんなんていらない。」
そう思った、クリコはFRSの責任者であるヒジカタと相談する。
「東京中の電気を止めてしまえば、アンドロイドはすべていなくなります。」
ヒジカタ達によって東京は大パニックに陥る。果たして、おばあちゃんの命は大丈夫なのか?そして、ヒジカタと一緒に行動しているクリコを止めることはできるのだろうか。

いずれも、キャラメルボックスで公演した作品で、成井豊さんの脚本集になります。脚本集単独で読むと、ストーリーがやや単純なのかなあ、と思うのですが、これがお芝居になるとピタリとハマるのですから不思議です。四十五分の作品を想定して書いたということですので、訴えたいことはあくまでも一本の直球勝負といったところでしょうか。良い短編というのはとても純度が高く、鋭さを感じるものです。小説と脚本の違いはありますが、この脚本集もそれに通じるものがあります。ひとつひとつは独立しているのですが、おそらく、柿本家という一つの繋がりが、長年のファンにはたまらないのでしょう。
正直、純粋な本としての評価は難しいです。本として見ればシンプル過ぎるストーリーは欠点になるでしょうし。ただし、公演として評価すると全く変わってきます。

蛇足になりますが、本書は、先日のキャラメルボックスの公演に行った時に購入した、成井豊さんのサイン本になります。公演に行って以来、情けないくらいすっかりハマってしまいました。今まで、新喜劇を除いて、演劇とか全くといっていい位興味がなかったはずなのですが、我ながらどうなっているのでしょうか?
ISBN:4560033668:DETAIL