池澤夏樹「きみのためのバラ」

先日、池澤夏樹さんの本を読んでいる途中に平行して、5月に行った、トークショーのメモを整理していると、この短編集の表題作で主人公が声を掛けた少女の名前で悩んだ、という話をしていたことを作品を読みながら思い出しました。
確かに少女の呼び名の響きによって、決定的ともいえるくらい作品の印象が変わってしまう作品です。
このトークショーの時、池澤さんは「短編は単純に技術で、長編は技術に思想によって書かれる」というような感じのことを言っていましたが、この短編集の言葉だけでなく、光景の鮮明さは、さまざまな場所を旅してそこでいろいろな事を考えた、池澤さんのバックグラウンドなしでは絶対に描くことはままならなかっただろうと思います。
ISBN:9784103753063:DETAIL