ポツドール「恋の渦」@THATER/TOPS

(あらすじ)
若い男女がパーティーのために集った一室。その中の男の友達に彼女を紹介するためのイベントだったはずが、そのことを知らされていない男はキレるわ、女はヒクわで全く盛り上がらず、場の空気がかなり気まずいことに。
適当なところで切り上げてそれぞれの部屋に帰った翌朝。昨夜のことを引きずりぎくしゃくしたり、昨夜のことなんかまるでなかったかのように過ごしたり、それをきっかけに付き合ってみたりと、彼等は自分達の都合に応じてそれぞれの日常を過ごしている。
それはそんな、良く言えば自分に正直で、悪く言えばどうしようもなく自分勝手な男女がおりなす「恋」の話し。
(感想)
話題になっている劇団だったので一度は観ておきたいなと思った一方、自分の好みとは全く合わないとも思っていたので、正直あまり大きな期待を抱かずに行きましたし、もっと分かりにくい作品かとも思っていたのですけど、自分の予想した以上に、観やすかったですし、面白い作品でした。
冒頭では、頭も下半身も如何にも軽そうで、中身の足りなそうな兄ちゃん、姉ちゃんが集り、各々好き勝手にやっているかのようなシーンから始まります。人の部屋を覗き見しているような感覚も面白かったですし、良く出来ているとは思うのですけど、何でこんなシーンを演じているのかという意味も必然性も全く分からない上に、登場人物達は、揃いも揃ってとても感情移入しにくい人間達ばかりで、最初のうちはこの先どういう展開になるのかものすごく不安な気持ちになります。
その印象ががらりと替わったのが、最初の幕間を挟んだシーンから。最初は何の変哲のなかったカップルの住む一室が、舞台の上下左右4方向それぞれに、登場人物たちの部屋が現れます。パーティーの後にその4つの部屋それぞれに起こったことを追いかけていく形でストーリーが進行していきます。その4つの部屋をつなぐツールとして、ケータイを巧みに使いながら、4つの部屋で起こっていくことが複雑に絡まりあって進行していきます。
この仕掛けにも驚いたのですけど、それ以上に感心したのが、作品の中で起こっていることが入り組んでいるのも関わらず、ものすごく観やすくできているということです。それは、複雑さのなかでも筋立てがきちんと整理されているのと同時に、例えばストーリーがどんなに錯綜していても、3つ以上の部屋で大きな出来事を起こさかったように、作品がとても緻密にコントロールされていて、細かいところまで計算されつくした舞台だったからだと思います。
舞台の構成自体は、よく整理されていて見やすかったのですけど、その作品のなかで描かれている人物達は、前述したように自分勝手な人達の人間模様です。まだ上手い具合にコミカルに演じられているのでいいのですけど、そうでなければ相当な不快感を感じさせるに違いありません。ただ、一方でここに登場する人達というのは、ある意味自分に実に正直な人達だなとも思います。彼等の愚かな行動には何一つ同情しようとは思わないのですけど、世間体とか見栄といったものを取り除いたとしたら同じような行動を取ってしまうかもしれないとも思い、彼等に対して共感を抱いてしまう部分も確かに存在します。
この作品を観ていると、恋人と言っても根っこの部分では他人に過ぎないということにドラスティックともいえる身も蓋もなさを感じながらも、他人で見えないこともあるから成立する人間関係もあるかもしれないといったこと、などについていろいろと考えさせてくれました。